安倍首相の訪ロ準備を目的にラブロフ外相が来日し、岸田文雄外相との間で4月15日に外相会談を開いた。ラブロフ氏は「交渉を継続する用意はある」と前向きの姿勢を示す一方で、「第2次世界大戦の結果」を日本が認めるべきだという主張を繰り返した。

 つまり、第2次大戦の結果、北方四島がロシア領になったことを日本側が確認しなければ、交渉は前に進まないというのだ。ラブロフ氏は同時に、「両国(議会)が批准した唯一の文書」として、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すことに同意した1956年の日ソ共同宣言をロシア側が重視する姿勢も明示した。

出所・外務省

「歴代のロシア首脳として初の困難な言及」

 政権に忠実な職業外交官として知られるラブロフ氏の発言は、プーチン大統領の考えを忠実に反映しているとみるべきだ。とくに、日ソ共同宣言を日ロ交渉の基軸に据える路線は、プーチン氏が2000年に大統領に就任して以来、一貫してとってきた立場でもある。

 その意向が如実に反映されたのが2001年3月、森喜朗首相(当時)との間で合意した「イルクーツク声明」だ。同声明は択捉、国後、色丹、歯舞の4島の帰属問題の解決を明記するとともに、日ソ共同宣言を「交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書」だと確認した。

 プーチン大統領は当時、イルクーツク会談の直前にNHKとのインタビューで「この宣言(日ソ共同宣言)はソ連最高会議によって批准された。すなわち、我々にとって、これ(宣言の履行)は義務である」と表明した。

 当時の首脳会談でも大統領はこのインタビューに言及し、「歴代のロシアの首脳として初めての困難な言及であったと述べた」と日本側の公式記録に残っている。大統領が当時、この「困難な」決断によって日本との北方領土問題を決着できると期待していたのは確かだろう。

出発点が「ゼロ回答」?

 ところが日本側はこの決断にさほど注目せず、領土交渉は停滞した。日本の対応には落胆しただろうし、当時と比べて今は、交渉を進める意欲が衰えているのではないかと想像される。

 もちろん、日本で安倍政権が安定政権として誕生し、ウクライナ危機をめぐる空白はあったものの、日ロの関係改善を志向しているのはまんざらではないはずだ。それでも領土交渉で、かつて自らが表明した日ソ共同宣言の「履行義務」を超える譲歩をするとは考えにくい。