ロシア大統領選で再選を決めたプーチン大統領に、早くも外交上の難題がのしかかっている。英国で神経剤を使ったロシア人の元スパイ襲撃事件が起き、英ロ関係が急速に悪化。英国は他の米欧諸国などとも連携し、反ロ包囲網を築こうとしているからだ。

英国で起きたロシア人の元スパイ暗殺未遂事件。メイ英首相は現地を訪問し、ロシアへの対決姿勢を強めている(写真:AFP/アフロ)

 「ロシアが関与した可能性が極めて大きい」――。英国のメイ首相は今月12日、在英ロシア人への襲撃事件について「英国への無差別で無謀な攻撃」だと表明した。ロシアのプーチン政権を激しく非難し、即刻、真相究明のための説明を求めた。さらに首相は14日、ロシアから真摯な対応を得られなかったとして、ロシア外交官23人の追放などの制裁措置に直ちに踏み切った。

 メイ首相が問題視した事件は、今月4日に英南部のソールズベリーで起きた。ロシア人の男女がショッピングセンター前の野外ベンチで、口から泡を吹き、意識不明の状態で発見された。直ちに病院に搬送されたが、いまだに意識不明の重体。救助に当たった英国人の警官も入院したという。

 被害に遭ったロシア人は、セルゲイ・スクリパリ氏(66)と娘のユリアさん(33)と判明した。スクリパリ氏はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の元大佐だった。ロシアメディアによれば、1999年にGRUを退役し、2003年までは外務省に勤務。その後はビジネスを営んでいたが、ロシア連邦保安庁(FSB)によって2004年末、スパイ容疑で拘束された。モスクワで英外交官と頻繁に接触していたことが問題視された。

 スクリパリ氏は逮捕後、1995年からスパイとして英秘密情報部(MI6)に協力し、主に欧州で活動していたGRUの職員や協力者の名前などを提供したと証言。見返りに10万ドルを超える報酬を得ていたと明かした。ロシアでは当時、同じくGRU出身の旧ソ連の大物スパイで、MI6などに機密情報を流して処刑されたオレグ・ペンコフスキーの再来とも言われた。

 モスクワの軍事裁判所は2006年、スクリパリ氏に懲役13年の有罪判決を言い渡した。ただし、服役中の2010年にメドベージェフ大統領(当時)によって恩赦を受けた後、米国とのスパイ交換で国外追放となり、同年から政治亡命者として英国に移住していた。