背景にはイランと原油

 両国の接近には当然、それぞれの思惑もある。サウジアラビアにしてみれば、イランへのけん制に利用する狙いが大きいようだ。とくにシリア情勢をめぐっては、和平プロセスからイランを除外するようロシアに迫っているとされる。

 ロシアにしてみれば、従来は米国一辺倒だったサウジアラビアに接近することで、中東での影響力拡大を狙う意図がうかがえる。もちろん、LNGを含めたエネルギーや原発、宇宙、軍事技術の供給先としての魅力もあろう。サウジアラビアはロシア製の兵器購入に関しては、「イランへのS300の輸出撤回」をロシア側に要求してきたものの、サウジアラビアには最新鋭のS400を供給することで双方が折り合いをつけつつあるようだ。

 両国の接近にはもうひとつ、互いの利害に合致した決定的な要因があることを忘れてはならない。原油の国際市場価格を安定させるための協調減産合意だ。

 サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国は2016年12月、15年ぶりの協調減産で合意した。市場価格を安定させるのが狙いで、この減産合意を機に原油価格の下落に歯止めがかかった。減産合意を主導したサウジアラビアもロシアも原油への依存度が高く、サウジアラビアにとってはサウジアラムコの新規株式公開(IPO)への負の影響を抑えたいという事情もあった。

 当初、2017年1月から6カ月末までとされた減産期間はその後、2018年3月末まで延長された。2017年11月末には、減産期間をさらに9カ月間再延長して2018年末までとすることで合意した。こうした一連の減産合意とその期間延長をめぐっては、ロシアの政治日程との関係でとりざたされる説がある。ロシア大統領選との関連性だ。

 プーチン大統領が再選をめざす大統領選の投票日は3月18日。ロシアの政権は大統領の選挙キャンペーン中、さらには次の任期当初に原油価格急落に伴う経済苦境や社会混乱が起きないように協調減産を主導したという見方だ。

 ロシアがサウジアラビアなどに対し、事前に周到な根回しをしていたのではないかと思わせる事例がある。プーチン大統領は2017年10月初め、モスクワで開かれた国際エネルギーフォーラムで、減産合意の延長期間を「最低でも2018年末」と予測していたのだ。直近の減産延長で合意する2カ月も前のことだ。

 再び、プーチン大統領とサルマン国王の2月14日の電話会談。両首脳は「世界のエネルギー市場発展のための調整を深める用意がある」との認識で一致したという。イデオロギーや政治的立場を二の次にし、互いの実利をひとまず優先するロシアとサウジアラビアの協調は、果たしてどこまで続くのだろうか。