サルマン国王のロシア訪問がきっかけ

 こうした両国接近の直接的な契機となったのは2017年10月、サウジアラビアのサルマン国王が初めてロシアを訪問したことだ。プーチン大統領は2007年にサウジアラビアを訪問している。その返礼としての国王の訪ロが実現するまで、実に10年もの歳月を費やしたことになる。

 「我々の招請を受け入れ、我が国を訪問して頂けたことを感謝します。サウジアラビアの国王がロシアを訪れるのは史上初めてです」。昨年10月、モスクワで開いたサルマン国王との首脳会談で、プーチン大統領は最大限の賛辞を国王に送った。さらに、初代アブドルアジズ国王が創設したサウジアラビア王国の前身となる国を1926年に初めて承認した国がソ連だったと述べ、両国の歴史的なつながりを強調した。

 首脳会談ではエネルギーと先端分野への投資を目的にした総額20億ドルの共同ファンド設立などを決めた。サウジアラムコによる「アークティックLNG2」への参画案もその際に浮上した。両国はさらに軍事技術協力にも前向きで、ロシア製の最新鋭地対空ミサイルシステム「S400」のサウジアラビアへの供給で基本合意したとされている。実現すれば契約額は30億ドル超に上り、ロシアにとっては中国、トルコに続く「S400」の供給先となるという。

 興味深いのは、ロシアがイランに対しては旧式の地対空ミサイルシステム「S300」の供給契約を結んだのに、サウジアラビアとの間では最新鋭のシステムが供給対象になっている点だろう。

 ロシアはもともと、中東ではイランとの関係のほうが深い。とくにロシアが2015年秋にシリアに軍事介入して以降、シリアのアサド政権を支援する立場でもロシアとイランの利害は一致する。

 一方、イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派の盟主イランの関係は悪く、2016年に国交関係を断絶した。シリア情勢をめぐっても反体制派を支持するサウジアラビアとアサド政権を擁護するイランは鋭く対立してきた。イランとの関係を踏まえると、本来ならサウジアラビアがロシアを「敵対国」とみなしても不思議ではないのに、互いに関係改善に努めているのはなぜか。

 ひとつはサウジアラビアで内政・外交の実権を握りつつあるサルマン国王の息子、ムハンマド皇太子の影響力だろう。

 ムハンマド氏は2015年6月、サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムに参加し、プーチン大統領と会談した。ムハンマド氏は「ロシアは1926年、サウジアラビアを最初に承認してくれた外国国家だった」などと語り、両国関係の発展に期待を表明。エネルギー、原子力、宇宙開発、軍事技術など幅広い分野で協力を深めることで合意した。

 プーチン大統領もそれ以降、折に触れてムハンマド氏と直接会ったり、電話会談をしたりしている。こうしたパイプづくりがサルマン国王の初の訪ロにもつながったようだ。