べラルーシの怒りを放置できない理由
ロシア国民の反発も強まっている。全ロシア世論調査センターが先に実施した調査では、市場価格より安い価格でのベラルーシへの原油・天然ガス供給に69%が反対し、78%が両国間のビザなし制度を廃止すべきだと回答した。
しかし、プーチン政権がルカシェンコ大統領の怒りをそのまま放置しておけないのも事実だ。
国内人気が高いルカシェンコ氏は1994年に大統領に就任して以降、すでに5選を果たしている。「兄弟国」ロシアとの関係を最優先にするとともに、かつては国内で野党勢力の弾圧やメディア統制を強めたことから「欧州最後の独裁者」と呼ばれた。欧州連合(EU)が制裁を科したこともあった。
ところが、ウクライナ危機の長期化の影響もあって、ロシアとベラルーシの関係は次第にぎくしゃくしつつあるのが実情だ。ルカシェンコ大統領自身、欧州との関係にも配慮するようになり、政治犯の釈放などにも応じた。EU側も昨年、人権問題で改善がみられたとして制裁の大部分を解除している。
大統領が80カ国の市民を対象に、ビザ免除で短期入国を認める措置を打ち出したのも、西側との関係改善と交流拡大を視野に入れたとみられる。
こうしたベラルーシの“ロシア離れ”を黙認すれば、ロシアにとって打撃となりかねない。まず、ロシアが主導するユーラシア経済同盟への影響だ。現在はベラルーシのほか、カザフスタン、アルメニア、キルギスが正式加盟しているが、その成果は乏しく加盟国の不満も多い。仮にベラルーシが抜けるようなことがあれば、この同盟がますます形骸化しかねない。
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