経済発展相の解任騒動でも暗躍か
一方でクドリン氏自身も、政権への影響力を保持しているようだ。アントン・シルアノフ財務相、汚職疑惑で解任されたアレクセイ・ウリュカエフ氏の後任の経済発展相に抜てきされたマクシム・オレシキン前財務次官はいずれもクドリン人脈とされている。
モスクワの情報筋によると、クドリン氏はまさに、昨年のウリュカエフ氏の解任劇にも一枚噛(か)んでいたという(関連記事「対日経済協力の窓口、ロシア閣僚解任の深い謎」)。政権内では当時、景気低迷のなかでも財政赤字を極力抑えるべきだとするシルアノフ財務相と、財政出動をテコに景気回復を優先すべきだとするウリュカエフ経済発展相が対立。厳しい財政規律の維持が持論のクドリン氏は財務省派を支援すべく、連邦保安庁(FSB)などと組んでウリュカエフ氏の切り捨てに動いたというのだ。
具体的には、FSBがウリュカエフ氏を対象に続けていた電話の盗聴記録を利用。中堅国営石油会社バシネフチの民営化に絡み、同社を最終的に買収した大手石油会社ロスネフチに対して、暗に賄賂の要求をほのめかす会話内容があったことから、それをプーチン大統領に伝えてウリュカエフ氏に対する信頼を失墜させたというものだ。
ウリュカエフ氏はその後、ロスネフチ社内で繰り広げられたおとり捜査によって収賄容疑で拘束され、経済発展相からも解任された。この捜査をめぐっても、ロスネフチを率いるイーゴリ・セチン社長とクドリン氏が裏で組んで画策したとの説まで出ているという。
真偽のほどはともかく、ウリュカエフ氏の後任人事で、財務省出身のオレシキン氏の経済発展相登用を大統領に進言したのは間違いなくクドリン氏だと情報筋は明かす。
ロシア政府は今年、原油価格1バレル40ドルを前提に連邦予算を組んだ。実際の原油相場は50ドルを上回っているが、シルアノフ財務相は原油高による増収分は基金向けにプールするとし、プーチン大統領の了解も得たという。政府の政策も目下のところ、クドリン氏の思惑通りに進んでいることになる。
では、クドリン氏は最終的に何を目指しているのか。2018年の大統領選を経てプーチン次期政権が再始動する際に、メドベージェフ氏に代わる首相職を狙っているという。
さすがに将来の首相人事まで予測するのは尚早だが、ロシア経済改革の行方を占ううえでも、プーチン大統領とクドリン氏の関係は注視していく必要がありそうだ。
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