プーチン再選のカギを握るクドリン氏
ロシアの経済専門家の多くが今、プーチン再選戦略に欠かせないキーパーソンとして挙げる人物がいる。アレクセイ・クドリン氏(56)だ。
クドリン氏はプーチン大統領のサンクトペテルブルク人脈の経済テクノクラートのひとりで、2000年の第1期プーチン政権の発足当初から副首相兼財務相を務めた。財政の専門家として、西側での評価も高い。
メドベージェフ大統領(当時)との路線対立もあって、2011年に下野したものの、現在は戦略立案センターの所長を務めており、大統領からの依頼で2018~24年の長期経済戦略を立案中だ。この戦略案がまさに、来年からの「プーチン次期政権」の経済改革の柱になるとされるものだ。
クドリン氏のプランは社会保障費と軍事予算を大幅に削減する一方、教育と健康分野への歳出を増額。IT(情報技術)など先端産業の育成、投資の活性化や労働生産性の向上などを進める路線だ。経済の抜本的な構造改革を進めることで、2022年をメドに4%超の経済成長達成をめざすという。
なかでも経済改革の柱になるとみられるのが、年金の支給開始年齢の段階的引き上げだ。社会保障費削減の切り札にするとともに、高齢者を労働力として生かすことで、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に対処するのが狙いだ。
クドリン氏自身、「ロシアの生産年齢人口はこのままでは2030年までに、08年に比べて約1000万人も減少してしまう」と警鐘をならしている。
こうしたクドリン氏の構想は国民に相当な痛みを強いる案だけに、プーチン大統領が最終的に採用するかどうかはなお不透明だ。ただし、クドリン氏に対する大統領の信頼は絶大だとされる。
最大の理由は同氏が財務相時代、将来の危機に備えて石油輸出代金の一部を蓄える仕組みを取り入れた立役者だからという。現在は「準備基金」「国民福祉基金」の2本だてで運用されている安定化基金は実際、一昨年来の景気低迷局面では財政赤字の穴埋めに重宝された。先見の明があったといえるだろう。
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