“カルピスの原液”理論

AKBのビジネスモデルはどう構築しようと考えてきたのでしょうか。

秋元:僕はビジネスのことは良く分かりませんが、やはり同じことをされたときに勝てないものは、やるべきではないと思います。そこにパテントなり何かがないと簡単に逆転されてしまうからです。昔からスタッフにはよく、「“カルピスの原液”を作れ」と言っています。その原液があれば、色々なところがそれを使ってアイスクリームやキャンディーなどを作りたいと言ってきますよね。

 アイドルはもっとオープンなプラットフォームにしたいと思っていました。“カルピスの原液”は誰でも使えるべきだと考えています。プラットフォームがあれば、“カルピス”を求める人がいる限りビジネスは成り立ちます。僕なんかが思いもつかないアイデアを、誰かが持って来てくれるんです。

その考え方の反対がジャニーズのように感じます。著作権でがちがちに固め、ネットでの配信や画像使用などにとても厳しい。

秋元:それは彼らがプロ集団だからです。AKB48グループは素人集団なんです。素人集団の強みは、オープンなプラットフォームになれることです。

 SNSが普及したときも、アイドルに自由にSNSをやらせるなんてダメだと反対の意見が多く出ました。しかし、その枠を超えてみようと思い、メンバーにSNSを解放しました。炎上することもあるかもしれないが、それはネットに限らず舞台やインタビューの場でもいつでも起こりえます。そこから自分で学んでいくべきですし、よりリアルに成長の過程が分かる良いツールだと思っています。

「ガラパゴス」に自信を

海外展開に関して伺います。これまで上海とインドネシア、そして今後はタイ、台北、フィリピンと広がっていく計画です。世界に出て行った際に、日本のアイドル文化の強みはなんだと考えますか。

秋元:“ガラパゴスさ”ですね。

 1980年頃、映画を作りたくて米国に映画の企画を持って行ったことがあります。しかし、けんもほろろに断られてしまいました。結局、海外で映画をやるのは無理なんだな、世界ってハードル高いなと思って帰国したんです。

 その後、日本で「着信アリ」というホラー映画を作りました。すると、米国からリメイクさせて欲しいとオファーがあったんです。「ジャパニーズホラー」であることが評価されたんですよね。

 つまり、アニメもディズニーとは違うし、アイドルも外国では概念が違います。ガラパゴス市場の中で、自分たちの好きなものをただ作ってきた。そこに強さがあると思います。だからこそ、ネットが普及して世界中の人々が日本のガラパゴス文化を見たときに「なんだこれ」と驚くのです。

 ですから、日本のガラパゴス文化が海外に出て行く際には、ローカライズする部分はあっても、基本スタンスは変えないべきだと思っています。例えば、納豆を海外で売るために納豆の臭みと糸を引く部分を排除してしまったら、それはもう納豆ではないですよね。納豆は納豆のままだからいい。世界に出て行くときに一番必要なのはこの点で、“ガラパゴス”で成長したコンテンツであると自信を持つことが最も大事なのです。