今の大衆はどのようなアイドル像を求めていると思いますか。

秋元:正直、僕は全く分かりません。

 ただ、「見たことのないものを見たい」という大衆の心理はいつの時代も同じだと思います。例えば、乃木坂46という公式ライバルを作ったのも、今までのアイドル界ではあり得ないじゃないですか。全く笑わないデビュー曲「サイレントマジョリティー」でデビューした欅坂46がヒットしたのも、大衆が見たことがない世界だったからです。

 サイレントマジョリティーは、CMソングの依頼があって作った曲です。当初は明るい曲でお願いしますと言われたのですが、全く逆になってしまいました。でも僕はどうしてもこの曲がいいなと思ったんです。それが、ちょうど甘いスイーツの後に、ちょっとしょっぱいものを望んでいた大衆にたまたま合ったのではないでしょうか。

アイドルをプロデュースする際に重要視していることはなんでしょうか。秋元さんの「面白い」は、どのような基準で生まれるのですか。

秋元:スタッフにはいつも予定調和を壊せと言っています。見る前から、聴く前から分かるものを人は選んではくれません。「なにそれ」ということに、人はハッとして見てくれます。

 そういう発言をすると、「秋元が奇をてらったことをしようとしている」と思われるのですが、決してそういうわけではありません。「アイドルはできない」「アイドルだからしちゃいけない」という枠を取っ払い、予定調和で敬遠されていたその壁を越えていきたいのです。

 いくつか例があります。AKBがスタートしたときに、あるメンバーが足を捻挫したので今日は休ませますと、運営スタッフから報告がありました。「それは大変だ。相当痛いのか」と聞くと、どうやらそこまで痛くはなく、歩くのも平気だけどダンスは痛くて出来ないということでした。

 そこで僕は、「それならステージでイスに座って歌いなさい」と言いました。なぜなら、それはその日しか見られない光景だからです。あのメンバーがイスに座って歌った光景を見たというのは、ファンにとって一つの貴重な体験になります。「怪我をしたらステージには立てない」という予定調和で囲まれた壁を越えたわけです。

驚きのオーディション方法

秋元:他にも、“塩対応”で話題となった島崎遥香も好例です。スタッフに当初、性格は本当にいいんだけれど、ファンへの対応が悪くて誤解されているメンバーがいると聞きました。スタッフから叱って欲しいと言われたのです。でも僕は、アイドルなのに媚びないのは面白いなと思ったんです。そういう子がいてもいいじゃないか、と。

 AKBグループのオーディションも少し変わっています。普通は審査員が何人かいて、それぞれルックス何点、表現力何点って点数性にしてやるんですけど、うちは全く違います。審査員が誰であれ、誰かが「この子いいね」と言ったら、他の全員が「えー!」と言っても必ず合格させます。なぜなら、その人と同じ感覚で「いいね」と共感してくれるファンが必ずいるからです。それを点数が高い順に上からとってしまえば、平均化した集団になってしまいます。誰かのツボは必ず誰かのツボなんです。