「移民」の定義は1年以上の滞在

 ミャッさんは現在、先輩社員2人と同じチームの一員として働く。オフィスでの会話は日本語で、図面に書かれているのも日本語だ。それでも、業務ではほとんど問題ないという。日本語の勉強を始めてからまだ3年程度だが、日本語能力試験で「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルとなる「N3」に合格している。

 故郷で一人暮らしをしている母親とは、楽天が買収した無料通話サービス「Viber(バイバー)」で頻繁に話をしているという。休日には新幹線に乗って京都や東京に行って友人と会うこともあり、今年の夏休みは富士山登山を計画している。冬の寒さを除けば日本での生活を楽しんでいる様子のミャッさん。「仕事で学ぶことがたくさんあるし、日本語ももっと上手になりたい。できればずっと日本で働きたい」と話す。

 国際連合の定義では、移民は「生まれた国、あるいは市民権のある国の外に移動し、1年以上滞在している人」となる。それに従えば、ミャンマーで生まれ、昨年から日本で働き始めたミャッさんは既に「移民」ということになる。日本では移民と言えば永住前提の外国出身の人を想起しがちだが、一般的にはよりよい仕事や生活を求めて国境を越えて移動する人たちのことを指す。日本企業の日本人社員でも、1年以上の海外駐在経験があれば「元移民」。そう考えれば、日本でも多くの企業の現場や取引先に、既に移民が存在することになる。

次に来日して働く人材向けの研修も開始している

 豊橋設計では、ミャンマーで採用した人材に来日してもらい、継続的に働いてもらう取り組みをさらに拡大する予定だ。候補となる人材をまず3カ月程度の研修として本社に呼び、技術を覚えるのと同時に日本での生活に慣れてもらうための機会も設けている。もちろん、こうしたすべての人材が長期的に日本で働き続けるとは限らない。日本で経験を積んだ後にミャンマーに戻り、現地法人でのリーダー役となるといったケースも想定している。

 日経ビジネス4月4日号の特集「移民ノミクス」では、技能実習生のように外国人を「安く雇える労働者」と見なす対応は限界に近づいていると指摘した。新興国と日本の賃金水準の格差はこれからも縮まるだろう。また、日本と同じように出生率の低下に悩む国が多いアジアでは、優秀な人材の獲得競争が始まっている。

 2016年、100万人の大台に達すると見られる外国人労働者は、いつまでも「勝手に来てくれる存在」ではない。日本企業にも、より戦略的に海外の人材を確保し、必要に応じて教育しながら組織の中に受け入れる取り組みが欠かせなくなってくるだろう。