休憩ばかりの外国人、即決しない日本人

 「三菱の人は外国人によう言わんのや」。協力企業で働く日本人技能者の1人は、そんな不満を漏らす。やらなければいけない仕事は山積みで、自分たちは働いているのに、一部の外国人技能者が休憩ばかりしている。それを注意しない三菱重工にも、腹が立った。

 ほかにも、夏に半袖半ズボンで働く、禁煙の場所でタバコを吸う、散らかしたゴミを片付けないなど、この技能者の感覚では「あかんやろ」という事がいたるところで目に付いた。しかし、喫煙所のルールが徹底されたのは今年初めのボヤ騒ぎの後。休憩やゴミの扱いに至っては、引き渡しまで直らなかった。

 一方、あるポルトガル人技能者は「日本人は意思決定に時間がかかりすぎだ」と憤る。現場で判断を仰いでも、すぐに答えが返ってこないため、作業を進められないことが何度もあった。クロアチア人技能者は「日本人は英語を話す人が少ないから、通訳を介さないといけない。手間がかかってしょうがない」と言う。インドネシアから来た技能実習生の1人は「遅刻に厳しく、残業も多いのでとても疲れる」とぼやく。

足りなかった互いの理解

 タバコなどは論外だが、それぞれが抱えていた不満には、文化や慣習の違いによって生じているものが少なからずある。例えば、ゴミの扱いは、すぐそばに「掃除」を職業としている人がいるかどうかで変わる。休憩や残業など、労働時間に対する意識や、意思決定のプロセスも様々だ。

 日本人だけで仕事をしている時には「あうんの呼吸」で通じたことでも、異なる背景を持つ人が交じり合う現場では明解な説明や、多様性を踏まえたマネジメントが必要だ。現場で働いていた人たちに話を聞く限り、長崎でそれが適切に行われていたとは言い難い。欧州技能者、日本人、実習生の間に報酬や待遇面の差があることも、不満の一つになっていた。

 こうした現場の不協和音は、人材配置のムダや引き継ぎの難しさなどを生み、少なからず工期にも影響した。建造期間が延びたことで、人件費や技能者たちを滞在させるホテル代も増え、損失は膨らみ続けた。設計に起因する損失と明確に切り分けることは難しいが、1800億円超に及んだ特損の一部は、多国籍の現場をうまくマネジメントしきれなかったことによるものだ。

 三菱重工の交通・輸送ドメイン長の鯨井氏は現場の混乱について、「ピーク時は5000人超が働いており、コントロールしきれなかった」と反省を漏らした。現在建造中の二番船(=今年3月に引き渡した客船と同型の2隻目の船)では、ITを用いた現場管理や、人員が増えすぎないように作業を平準化すること、工法の改善といった対策を進めているという。ただ、問題は人数や作業工数だけではない。

 日経ビジネス4月4日号の特集「移民ノミクス」。今年、日本で働く外国人は100万人を超える可能性がある。三菱重工の客船に限らず、日本のなかでも海外の人と一緒に働く現場は増える一方だ。それを混乱の火種にしてしまうのか、多様性を成長に生かす好機にするか。その差はあまりにも大きい。