難民のアイデアで社会イノベーションを

ReDIスクールを立ち上げた社会起業家のアンネ・リヒャルト氏

 「難民の中にも、アイデアや才能を持った人がたくさんいる。彼らの能力を解放してあげたい」。ReDIスクールを立ち上げたアンネ・リヒャルト氏は言う。

 リヒャルト氏はもともと、平和研究を専門とする学者だった。米スタンフォード大学などで学び、日本の大学にも留学した経験を持つ。そんな彼女が難民支援活動を始めたのは、自分自身の生い立ちによるところが大きい。

 「祖父の時代、ナチスドイツに迫害を受け、デンマークに難民としてかくまわれた。その時、デンマークの人々が支援の手を差しのべてくれたから今の自分がある」(リヒャルト氏)。昨年9月、アンゲラ・メルケル首相が難民の大々的な受け入れを表明し、大量の難民がドイツに流れ込み、社会問題になった。「支援をすることが使命だと感じた」とリヒャルト氏は言う。

 ただし、寄付やボランティア活動では単発で終わってしまい、難民支援に大きなインパクトを与えることができない。仲間とともに議論し、たどり着いた結論が、教育の場を提供することだった。「支援というと、難民に“対して(about)”何ができるかと考えがち。そうではなくて、難民と“共に(with)”何ができるかを考える場を作ることにした」。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOも2月にReDIスクールを訪れ、支援を決めた

 だから、ReDIスクールはプログラミング学校という立て付けだが、実際にはベルリンの起業家や支援に興味を持つドイツ企業の関係者と難民が交流する場としての機能を果たす。互いのアイデアや知見、体験を語り合うことで、ドイツと難民双方が抱くステレオタイプのイメージを壊す。そこから、新しい社会イノベーションが生まれることを期待している。

 リヒャルト氏が描いているのは、新しい難民支援像だ。「若い難民の多くは、スマートフォンを使いこなす。彼らにドイツ語を教えることも大事だが、21世紀の言語であるプログラミング言語を教えることで、ドイツの一員になってもらう道があってもいいのではないか」。