寒冷地ならではのトラブル

 ここまでは順調であったが、撮影していたデジカメのバッテリーが通常より早く消耗し、充電催促のランプが点滅し始めた。釧路駅を出発したあたりでは、約1/3程度の充電量で、いつも通りならばその日中の撮影は可能な充電量だが、寒冷地では考えが甘かったようで、寒さで電池の消耗が激しくなっているようだ。何となく予想はしていたものの、前日にフル充電できなかった事が失敗であった。このまま電池切れで撮影ができなくなってしまう前に、デジカメをポケットに入れ、体温で温めながら、だましだまし撮影を続ける事にした。プロのカメラマンが予備のバッテリーを複数個持ち歩いている事を思い出し、大いにうなずけた。冬場を旅する際には、電池の残量に気を配ることも必要となる。

 ちなみにこの日の最高気温は-0.5℃、最低気温は-4.5℃、平均気温は-2.1℃、平均風速は3.5m/sであった(気象庁の気象データより)。

 いよいよ最東端の地碑へと足を運ぶ。筆者はここを訪れるのは初めてではないが、以前は夏場でいずれも霧の中の風景であった。夏場でも少々肌寒い印象が強く残っている。冬場は今回が初めてだが、この日は晴れて天候が安定しており、気温こそ低いが風も強くなく見晴しも良い。先程のバスの乗客の他、自家用車で訪れている観光客も意外と多く、周辺はにわかに賑わいを見せている。ここだけを眺めていると、「最果て」という感じはあまりしない。どちらかというと、一般の観光地といった雰囲気である。

最東端の碑

 しかし少し足を延ばしてみると、土産物店等はほとんど閉まっており、あまり人とは出会わなくなる。冬の北国ならではの光景であろうか。加えて飛行機を降りてからの行程や所要時間を考えると、やはり最果ての地へ来たという実感が湧いてくる。ひと通り観光客が、記念撮影を終えたころを見計らい、碑の周辺でしばらく冬の太平洋を眺めることにした。

北海道最古の灯台へ

 ゆっくりと思いを馳せながら眺めていると、寒空の下の40分間とはいえ少ないもので、帰りのバスの時刻が迫ってきた。碑から見える納沙布岬灯台を速足で目指すことにする。

碑から見える灯台
納沙布岬灯台
納沙布岬灯台の案内板

 この灯台は、北海道で最初に設置された最古の灯台である。1872年(明治5年)に、当初は木造で設置され、のちの1930年(昭和5年)に現在のコンクリート造りに改築された灯台である。

 設置当初は、まさしく「海のみちしるべ」として、重要で頼もしい存在であったことであろう。現在ももちろん、その役割を引き継いでいる。ここは突端に位置するため、最果てという雰囲気が出ており、なかなか良い。そんな想いを巡らせながら付近を廻る。もう少しゆっくりと景色を目に焼き付けたいところであるが、根室駅方面へのバスの発車時刻が近づいてきたため、ふたたび速足でバス停へと戻る。

 バスは往路と同じ車両で、乗客もほぼ同数であった。それぞれに、冬の納沙布岬を堪能した事であろう。約40分という短い時間ではあったが、天候が安定した状態で冬の納沙布岬を堪能できた事は幸運であった。そんな考えを巡らせながらバスに乗り込み、宿へと向かった。

 第1回目は宗谷岬、第2回目は納沙布岬をそれぞれ紹介したが、どちらも一般的な観光シーズンは夏である。しかし敢えて厳しい環境の冬に旅することによって、今までと違った景色を見る事もできる。悪天候になり、目的地へ行く事すらできないリスクは確かに存在するが、近年の外国人観光客にも人気が出始めているように、冬場でしか見る事のできない貴重な風景もある。また冬の味覚も楽しみの一つでもある。そんな旅のスタイルも良いのではないかと感じる。

※記事中に示した地図やガイドブックは、旅行時(2016年1月)に著者が使用していたものであり、現在の最新版ではありません。
※本文中及びモデルプランの旅行情報は、著者個人が2016年1月時点に調べたものであり、今後変更になる可能性があります。また内容を保証するものではありません。おでかけの際には、改めてご自身で事前にご確認下さい。