提供:パナソニック
まずは1枚の写真をご覧頂きたい。この機械は何のためのものかお分かりだろうか。

カキ氷を削る機械か、あるいはコーヒーミルか、フードプロセッサーか――。残念ながらいずれも不正解だ。
正解は「洗濯機」。1951年前後に松下電器産業(現・パナソニック)が製造・販売していたもので、スイッチを回すと中に入れた水と洗濯物が回転し、攪拌されて洗われるという方式だった。
多くの日本人の記憶にまだ色濃く残っているはずだ。ベランダや屋外、勝手口近くに置かれた洗濯機を使って家族の衣服を洗っている、あるいはもっと古い記憶では、しゃがみこんで盥に張られた水を使って洗濯板で衣服を擦って洗っている母親の姿。寒い冬には手がかじかみ、シャツの首筋についた落ちにくい汚れを擦って落とすには力も必要だった。まぎれもなくそれは、毎日繰り返される「重労働」だったと言っていいだろう。
ご存知の通り、家電はそこから大きく進化した。
遠心力で衣服を脱水する機能、熱風で乾燥させる機能、洗い物の種類によって回転数や乾燥の程度を変える機能、設定しておけば決まった時間に洗い終える機能など、次々に新たな機能を備えるようになった。
その進化は、手が切れるような冷たい水に耐えながら筋力と時間を日々費やしていた人たち――多くの場合は「主婦」だった――を助け、負荷を軽減して来た。
生活家電とは、その“主婦”たちの手足の機能をエンハンス(拡張)し、その働きを助けるものだったと言っていいだろう。例えば洗濯機は、洗濯物を水の中で攪拌する、絞る、干すといったアクションをサポートすることで、その所要時間を短縮し、“彼女”たちの生産性を高めて来たのだ。それがすなわち「豊かになった」ということだった。
だが、これまでの多くの家電ができたのは“主婦”機能の「エンハンス」までだった。1時間かかっていたプロセスが30分になったとしても、“主婦”が判断し、行動するのを助けることしかできなかった。今、この高度成長期以来の家電のパラダイムが変化しようとしている。
その変化を可能にしたのはAIやIoTなどのテクノロジーであり、その変化を必要としたのは日本の「家庭」というものに訪れている地殻変動だった。
共働き世帯の増加は経済活動にとってプラスなのか?
地殻変動から見ていこう。上に見たように「家事は主婦が行うもの」という時代が日本にあったことを否定する人はいないだろう。しかし「あった」という言い方がしっくりくるようになっているのは、そんな時代はとっくに終焉を迎えたということだ。女性の社会進出支援策が実を結び、共働き世帯が増えているのは様々なデータを見てもまぎれもない事実である。
- 1.昭和55年から平成13年度までは総務省「労働力調査特別調査」(各年2月。ただし、昭和55年から57年は各年3月)、平成14年以降は総務省「労働力調査(詳細集計)」より作成。「労働力調査特別調査」と「労働力調査(詳細集計)」とでは、調査方法、調査月等が相違することから、時系列比較には注意を要する。
- 2.「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」とは、夫が非農林業雇用者で、妻が非就業者(非労働人口及び完全失業者)の世帯
- 3.「雇用者の共働き世帯」とは、夫婦ともに非農林業雇用者(非正規の職員・従業員を含む)の世帯。
- 4.平成22年及び23年の値(白抜き表示)は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果。
ご存知の通り、日本はこれから深刻な労働力人口の減少に直面する。この手の「労働力」や「労働」にはいわゆる専業主婦や家事はほとんど含まれないため、共働きによって専業主婦が社会進出すれば労働力人口の減少抑止に寄与する。
しかし、その代償として家事に費やされる“労働力”は減ってしまう。専業主婦が行ってきた家事を仮に金額換算した場合、家事時間の減少はそのまま「損失」となってしまう。“家の外”での業績が上がる一方で、“家の中”での業績は落ちてしまうというわけだ。
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