ところが、殆どと言っていいほど反響はなかった。久しぶりに会った同僚に、「あれよろしく」と言っても、言葉を濁されてしまう。すると、そのうち同期の社員の一人が声をかけてきた。
 「あれ、やめた方がいいよ」と言う。
 どうやら、手当たり次第に声をかけていることが知れて、「いったい仕事してるのか?」という噂になっているらしい。

「全然会ってないのに、いきなり無心かよ」
 そんなことをいう者もいるという。
 Kさんは、不満を感じた。頼んだのは大した額でもないし、なにより自分がしていることは世のためになっているはずだ――そんな思いがあったのだ。

仕切り過ぎたことで、知らぬ間に「蚊帳の外」へ

 社外活動を始めると、意外と難しいこともあるのかもしれない。
 そう感じたKさんは、Cさんに相談した。先の寄付金の件を話すと、「ああ、それは一番まずいよ」とCさんは言う。
 「こういう活動を始めたら、いままでのネットワークを利用しようなんて考えちゃダメだよ。すべて一からやるつもりじゃないと」

 小さなNPOでは、どんなことでもコツコツやるしかない。大企業気分で、大きく動かそうとするとうまくいかないこともある。最初は重宝されても、地道にやるのが一番だ。
 そんなCさんの話を、Kさんは黙って聞いていた。

 ところが、Kさんは根っからの「仕切りたがり」のところがある。ミーティングなどでも、グイグイ引っ張るのはいいけれど、地元の人が言いたいことを言えないままに終わることもあった。
 「ワークショップ」ということで紙にみんなでいろいろ書き込んだり、と新しい方法は歓迎されたりもした。でも、結局はKさんがまとめてしまう。

 Kさんが知らないうちに、メンバーの中ではジワジワと疑問と不安が高まっていたようなのだ。
 ある週末にKさんが訪れて、いつものようにミーティングを行うつもりでいると、なんだか様子が違う。聞けば、「ミーティングは平日の夜に済ませた」という。

 これから週末は農地の現場作業を中心にするという。確かに一理あるのだが、最近ではKさんが来る週末にミーティングをするのが習わしのようになっていたのだ。
 どうやら、Kさんのいないところで何かが変わりつつあった。
 そんなことで居心地が微妙になってきたKさんにとって、さらに追い打ちをかけるようなトラブルが起きた。
 震源は、家庭だった。