「グローバル人材」とおだてあげ、あとは任せきりの企業

 そう続けると、会場にはそれまでとは異なるちょっとした緊張感が漂った。

 「まあ、そんなことを言うと今日のセミナーは成り立ちませんが」と場を和ませてから、その真意を語る。

「グローバル化に遅れまいとした企業は、どこもまず『グローバル人材』を育成することに躍起になる。しかし、いざ準備ができて海外に行った後は任せっぱなし。そもそも経営陣が、グローバルの本質を理解してない」

 Pさんは、心の中で静かにうなずいた。

「グローバル化とは、日本を起点にしてビジネスを考えるのではなく、地球規模で広くビジネスを考えるということ。会社が本気でグローバル化を目指すのであれば、企業全体がグローバル的な考え方をしていなければならない。つまり、日本にいる社員を含めて全社員がグローバルな視点を持つべきです。それはいきなりは無理かもしれないけれど、誰もがスタンバイできるように企業自体が人材教育の発想を換えなければならない」

 そして、こう続けた。

「なのに、一部の社員を『グローバル人材』とおだてあげて、結局は海外事業は任せきり。果ては、あちらこちらのトラブル処理で重宝がっているだけの会社も結構ある。これでは、グローバル企業になるのは不可能です」

 その後、Z教授は成功事例のケースを挙げて熱弁をふるったがPさんの耳には入らなかった。漠然とした思いが、ようやくアタマの中で形になってきたのだ。

 そして、Pさんが転職を決めるまでには、さほどの時間を要さなかった。転じた先は今までとは全く異なるB to Bの製造業だったが、そこはまさに「グローバル」だった。

 東京のオフィスにもいろいろな国の社員が多い。英語を話すことも普通だが、片言の日本語も飛び交う。

 そして、こういう会社ではそもそも「グローバル」という言葉がほとんど聞かれないことにPさんは気づいた。

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