「相談があります」

「会社は変わるし、仕事だって変わるんだから」

 それが、Lさんの口癖だった。彼は、急成長を遂げた情報メディア企業のマネージャーとして、数多くの経験をしてきた。

 若い頃は、会社もまた若かった。夜遅くまで働き、休日出勤も当たりまえ。その上、日曜にオフィスに出てきた仲間同士で飲みに行ったりもしていた。

 ところが、バブル崩壊後の景気低迷期に入ってから会社にも変化が訪れた。右肩上がりの業績に変化が表れただけではない。ビジネスの上で「行儀の悪い」ことが目立ち、マスコミ沙汰にもなったりした。

 幸い司直に立件されるような事態にはならなかったものの、「イケイケ」的な雰囲気は変わり、「大人の会社」になった。

 それを物足りなく思う同僚も多かったが、Lさんは違った。時代の変化に合わせて仕事のスタイルを変えた。勤務時間を短くしながら業績を向上させて、早くからマネジメントの仕事を任された。

 部下にも過剰なプレッシャーをかけずに、適度な距離感を保ちながら上手に力を引き出す。社内でそんな評価を受けていた Lさんの部署で、ちょっとした異変が起きた。3年目の女性社員Jさんがどうも辛そうなのだ。

 比較的小規模なクライアントを抱える営業チームだ。多忙になりすぎないように、細心の注意を払っていたし、勤務時間はそれ程でもない。ただ「ちょっと微熱がある」とか、「頭痛がとれない」と言って、欠勤や早退が目立つようになった。

 ちょっと話をしてみようか、という時にJさんの方から「相談があります」と言ってきた。「やはり」と思ったLさんだったが、平静を装って話を聞き始めた。