「それにしても、いろいろあったよな」

 いま、Rさんはこの2年間をしみじみと振り返っている。山あり谷ありとはいえ、比較的平穏なまま40代を迎えたつもりだったが、この2年はまさに「激動」だった。

 いまRさんは、とあるソフト開発企業の役員だ。ただし、このポジションに落ち着いたのは3カ月ほど前のことである。居心地はいいし、報酬にも満足しているし、仕事にも慣れてきた。しかし、そこにいたるまでの「激動」の日々を思い出すと、ついつい心がざわついてしまうような状態だった。
 そして、ようやく「あの時のこと」を落ち着いて考え直すことができるようになったのだ。

 およそ、2年前のこと。Rさんの会社は、久しぶりに注目を浴びていた。
 ITメーカーとしての知名度は高い。しかし、ここしばらくは事業撤退やリストラの連続だった。
 Rさんが入社した20年ほど前は、パソコンブームに乗って業績も右肩上がりで、有名タレントを使ったCMも話題になっていたし、大学生の中でも人気企業だった。

 しかし、デジタルのビジネスはやがて世界的な大競争の時代になっていく。急速に「改革」は進み、会社全体はB to Bの分野にシフトしていった。もはやCMなどもほとんどなくなり、学生からの就職人気企業でもない。
 それでも業績は堅調で、やがて新しい分野への進出も行われるようになる。そうした中で、Rさんは30代後半で新しいプロジェクトを担当することになった。それは、大きなチャンスに見えた。