マネージャー職への昇格は「イヤ」
Rさんのキャリアからいえば、マネージャー職になる資格は十分に有している。ところが、Rさんはハッキリと嫌がっている。そのため、役員も困っていた。「専門職としてのコースもあるので、それでいい」というのが本人の考え方だ。
しかし、彼を上回る力量の者はそうそういない。年下の上司にはちょっと扱いづらい。とはいえ、経営陣直轄の「特別扱い」というのも前例がない。
そんな状況の中で、新たな役員が赴任してきた。親会社から送られてきたDさんだ。
現場と人事部のそれぞれでキャリアがあり、Rさんの会社では「人事・総務」の担当役員だ。「相当の実力派みたいだ」という話はすぐに広まり、社内は期待した。
Dさんは、引き継ぎで前任者からRさんの話を聞いていた。「凄いスキルはあるけど、頑固なんだよね」という話である。
それとなく聞いてみると、前任者とRさんは、どこかギクシャクしていたらしい。そして、その理由としてまことしやかに語られている話が面白かった。
昼休みなどの世間話の時に、その前任者の役員はこんなことを言ったらしい。
「もう、イチローもそろそろ限界じゃないか」
それを耳にしたRさんは、以来、彼のことを好ましく思わないようになったのだという。
Dさんは思わず苦笑した。もはや社内の「都市伝説」のようになっているが、それだけRさんの存在感があるということだろう。
(これは、じっくり話を聞いた方がいいな)
そして、Dさんの思案が始まった。
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