勘所を見きわめる絶妙の「仕事の仕分け人」
広告代理店に勤めるEさんは、60歳を超えたが営業現場で頼りにされている。部長職を役職定年で退いた後も、同じ営業部に残っている人は珍しい。
同じ部署にとどまっていると、元部下に妙に気を使わせることもある。そもそも「現場にいてもすることがあまりない」というのが、厳しい現実だ。関連会社などで、定型的な仕事をする人が多い。Eさんの後任部長は、50代前半なので、まさにホークスの達川コーチと工藤監督のような年回りになる。
では、どうしてEさんはいまでも頼りにされているのか?それは、年齢の割には「デジタル周り」に強いからなのだ。新聞やテレビ広告で育ってきた世代は、インターネット広告の仕組みを理解しきれていないので、若い人に任せがちになる。Eさんはもともとパソコン好きだったこともあり、インターネットにも強かった。
インターネットの広告は、作業がとても細かくなる。スマートフォンなどに出てくる広告も、その人の過去の履歴や今いる場所や時間帯などを考慮して出稿される。
それを検証して改善していくと、仕事が際限なく増えていく。そこにEさんの出番がある。得意先に同行して、莫大になりかねない作業を仕分けする。「立ち上げからの一週間は集中してスタッフをつけます」「この目標を達成したら、ちょっとセーブして予算をとっておきましょう」そんな感じで説明してくれるから、スタッフも得意先も安心する。役職者ではなく、無理に売り上げようとはしないことが、信頼を得て好循環につながっているのだ。
若い世代はデジタル関連の知識はあるものの、経験が浅いために「あれもこれも」となりがちだ。しかし「ここまでで十分」と言える説得力はまだまだである。
ベテランで、かつ最新技術も理解できるEさんの存在は本当に貴重なのだ。
心の機微に通じた「究極の窓際族」
また、とあるメーカーの人事部次長のKさんは、50代半ばで営業部長を退いて今の仕事をしている。そこには、少々特別な事情があった。
入社以来営業部門の第一線で順調にキャリアを重ねてきたKさんだが、50歳になる頃に転機があった。1人暮らしをしている父親の介護である。
いろいろと体調を崩していく親を見ながら、段々と自分のできることを模索しているうちに、自らのキャリアについても考え直すようになった。何もつきっきりになることはないが、定時で帰り、休みも取りやすい環境であれば、親のためにできることは多い。そのためには、営業部長でいることは困難である。
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