実はOさんの不在中にCM企画の提案があったのだが、部下がきちんと仕事をこなしていたのだ。

 この休みをきっかけにOさんの仕事ぶりは変わった。遅くまで仕事をせずに、部下に任せて帰るようになった。すると、チームに活気が出てくるのが目に見えてわかった。

「休む上司」の下で若手が育つ

 実は、休み明けのOさんは、部下が仕事を進めていたことに一瞬焦ったという。

 「やっぱり休んでいると、自分の居場所がなくなるんじゃないか?」という感覚だ。しかし、思い切って発想を切り替えることができた。

 これだけ休んでも仕事は回るんだから、休んだ方がいいんじゃないか。それに、やっぱり長い休みはリフレッシュできる。その良さを実感できたことが大きかった。

 その年から、Oさんの「長い夏休み」は恒例になった。8月に殆ど出てこない年もあったが、「そういうものだから」とまわりも気にしなくなる。

 そのうちに「あのチームは若手が育つ」という評判になってきた。Oさん自身が働く時間が短くなるのと反比例するように、社内評価が上がりマネジメントを任されるようになった。

 CMづくりの第一線からは離れたけれど、リーダーとしての存在感はさらに強くなっている。

 「いかに働くか」ではなく、「いかに休むか」。あるいは「いかに上手に休ませるか」が、大切になってきた。それが、会社員特にミドル世代の評価につながりつつある。

 夏は、自らの仕事と生活を考え直すいい機会かもしれない。

今週の棚卸し

 「働き方改革」の波の中では、いろいろな試行錯誤がある。ことに「上手に休暇を使えるか」というのは、その人の能力だけで決まるものではない。Wさんのように心配性の性分が治らなかった人もいれば、Oさんのように発想を切り替えられた人もいる。

 うまく休めない人は、一度その原因を自分なりに考えてみてはどうだろうか。「業務が多いから」「自分がいないと仕事が回らないから」という“理由”は、往々にして思い込みであることも多い。

 休暇期間は、自分を知るいい機会でもあるはずだ。

ちょっとしたお薦め

 働き方について考えるのであれば、時短や生産性のような現実的な課題だけではなく、「そもそも働くとは?」という根本的なテーマについて思いを巡らすことも大切ではないだろうか。

 今回は、ちょっとヘビーであるがマックス・ウェーバーの名著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をお薦めしたい。

 学生時代にチャンレジした人もいるだろうが、中山元氏による新訳は読みやすく、注釈も豊富だ。

 第2章1節がキリスト教各派についての詳細な考察になっており、ここは少々手こずるかもしれない。ただしこの部分を理解しきれなくても、その後の展開は明快だ。

 腰を据えて読む時間があれば、ぜひ挑戦してみてはどうだろうか。