しかもその時は、休暇だけではなく、広く人事システムの見直しをしている頃だった。いわゆる360度評価が導入されていたのだ。

 「きちんと進捗管理をしている」というWさんの評価は、「適切な権限移譲ができていない」と見なされるようになっていく。

 間もなくWさんは現場の一線を外れて、管理部門に異動した。傍から見ると、彼に合ってる「順当な」異動にのようにも見えたが、実は「柔軟な働き方のマネジメント」ができなかったことが原因だったのだ。

大不況の「社内失業」を追い風に

 その一方で、「休み方」を一新したことで新しい仕事の仕方を切り開き評価されるようになった人がいる。

 広告代理店のクリエイティブ部門で、多くの部下を率いるOさんは、ある年の夏に仕事上の転機を経験した。しかし、それは仕事がきっかけではなく「休み」がきっかけだったのだ。

 TVCMを制作する仕事は、多忙で不規則だ。毎日決まった時間だけ、働くわけではない。海外ロケになれば辺鄙なところまで行くことも多く、移動時間だけでも相当なものだ。

 編集になると遅い時間まで粘るし、企画のプレゼンテーションの前にはプレッシャーもかかる。

 当時売れっ子ディレクターだったOさんにとっての夏季休暇は「あってないようなもの」だった。それが当たり前だったし、子どもの夏休み中に近場の海にでも行ければ「上出来」だと思っていたのだ。

 ところが今から数年前の金融不況の後に、入社以来の「恐ろしいほどヒマな夏」がやってきた。

 いわゆる「リーマンショック」が広告業界を直撃したのだ。Oさんの担当していた自動車会社の広告予算は大幅削減になり、他の得意先も広告出稿を手控えた。

 そのため、7月になってもOさんのスケジュールはスカスカだった。

 いわゆる「社内失業」の状態になって、さすがに不安になる。上司に相談しても、「まあ、たまには休めばいいんじゃないか」としか言わない。

 考えてみれば、有給休暇も相当たまっている。「じゃあ、ホントに休みますね」と宣言して、2週間たっぷり休むことにした。

 家族で旅に出て、妻の実家に帰省して、近所のプールでゴロゴロしているうちに2週間はあっという間に経った。

 「何かあったらいつでも連絡してくれよ」と周りには言っておいたが、何の音沙汰もない。そして、出社してみたら意外なことがあった。