鬼と仏の好対照の2人

 警察を舞台にしたテレビドラマは多いが、出てくるキャラクターは昔から変わっていないところがある。典型的なのは人に対して厳しい「鬼」タイプと、優しい「仏」タイプだろう。

 そして、会社の中にもそうしたキャラクターは存在している。営業課長のDさんとFさんは、そうした関係のよきライバルだ。2人が勤めている会社は飲食品を扱っていて、主に外食産業が得意先だ。景気に敏感で競争も激しい業界だから、得意先の製品購買もシビアである。

 2人とも担当する得意先は比較的小規模の店が多く、売る側の営業も大変だ。大口得意先よりも効率はよくないし、一生懸命頑張っても、格安の条件を提示してくる競合にさらわれることもある。

 DさんやFさんの大切な仕事は、こうした環境で頑張る部下たちのモチベーション維持が大半だと言ってもいい。

 そして、Dさんは「鬼」として現場を引っ張ってきた。成績が上がらない者や士気の低いものには容赦がない。しかし、そこから頑張って成果を出した時には、飲みに連れて行って大いにねぎらう。

 いかにも「古いタイプ」だとは自覚している。だが、Dさんだってむやみに叱っているわけではない。

 「大切なのは潜在能力を伸ばすこと」

 そのためには、誰もが持っているはずの「負けん気」に火をつけてやることだと信じている。しかし、それにはタイミングが大切だ。

 たしかに、Dさんは計算して叱っている。意欲がある部下が、頑張ったのにも関わらず、競争相手に負けた時など「もっとも悔しがっている時」にあえて叱るのだ。

 その一方で、意欲のない部下には叱ることすらしない。そうした部下は自然と居場所がなくなるので、Dさんの元には意欲の高い者が自然と揃う。

 ただ、ここ最近はその方法にも、やや限界が見えてきた。

「褒めて伸ばす」で一気に注目されて

 若手の社員が、Dさんの勢いに負けて、凹んでしまうことが起きるようになったのだ。