
なぜか早々と「枯れてしまった」先輩
Lさんは、事務機器メーカーに勤める30代後半の女性社員だ。企業相手から消費者向けの製品まで広く扱う老舗だが、社内の風通しはいい方だと思っている。女性にとっても働きやすく、Lさんも近頃チームリーダーになった。
そんな彼女にとって、Gさんとの出会いは大きかった。彼は10年ほど歳上で、仕事のことを丁寧に教えてくれた先輩だ。営業部門の所属で、合理的に考えるタイプで、押しつけがない。
そのGさんは、最近次長になった。この会社で、このポストを「どう見るか」は、なんとも悩ましい。次長経由で部長になる人もいれば、ここが「あがり」という人もいる。次長を飛ばしていきなり部長になる人もいるので、何とも「微妙」なところなのだ。
Gさんは、どうやら早々に割り切ったらしい。担当得意先があるわけでもなく、仕事内容は、大きいプロジェクトや部門横断案件の調整役などが多い。時間的にもラクになったようで、気がつくと帰宅していることも増えた。
「まあ、そんなものかな」とLさんは思う。もともとGさんは、出世に執着したり、競争に燃えるタイプではなかった。そういう人なんだな、とわかっているが、彼女にとってはどこかスッキリしない。
最近聞くところによると、Gさんは結構いろいろな趣味をもっているようだ。アナログレコードを集めているとか、折り畳み自転車であちらこちらに行ってるとか、いろんな話が聞こえてくる。料理も達者なようで、話を聞いた女性は「本当に奥さんが羨ましい」などと言う。
でも、Lさんは、「なんか違うんだよなぁ」と思う。
Gさんは、たしかにガツガツした人ではない。しかし、確実に仕事はできる人だ。「地頭がいい」というのだろうか、皆が悩んでいるような時でもスッと答えを出してくれる。
何と言っても、彼女にとっては仕事の手ほどきをしてくれた、大恩人なのだ。だからこそ、歯がゆい思いもあったのだろう。
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