キレた理由はわからぬままに
その日のX課長は、その後はほとんど必要なこと以外は話さずに、夕方になると何事もなかったかのように会社を去っていった。
しかし、これで終わるわけがない。課長の退社後に、中堅社員がリーダーとなり、自然に集まった。
まず、X課長の精神状態がどうだったのか? たしかに、叱られた2人にも理由はある。新入社員の状況を定期的に報告するべきところが、ついつい遅れがちになっていたのだ。
しかし「それほどのことじゃないだろ」というのが皆の一致した意見だった。
しかも、罵詈雑言の中身がない。さらに、女性に対しては相当に品のない言葉も使っている。つまり、「パワハラとセクハラ」というダブルの失態だ。
「この件は、この中だけで終わらせられないな」
リーダーの社員が言ったことばに、異論はないようだった。
「もう、課長とはまともに話せない」
叱責された女性トレーナーの言葉にみんな頷いた。人事部には、こうしたハラスメントの相談窓口もある。週明けに連絡をとることになったが、みんなの心には引っかかりが残る。
なぜなら、X課長は穏やかな人だったのだ。少々神経質なところはあるけれど、「優しい課長」という評判だった。だからこそ、みんなどこかスッキリしないのである。
Powered by リゾーム?