いつもの職場で金曜朝の「大惨事」

 金曜日の朝のオフィスは、どこかソワソワしている。しかもその後が三連休ともなれば、なおさらだ。ここを乗り切って楽しい週末を迎えるために、ちょっと無理をして頑張ってきた者たちが、仕事の区切りに向けて朝から慌ただしくしている。

 そんな中で、ちょっと異様な光景が起きていた。X課長が、2人の社員をずっと叱責している。それも、段々と声が大きくなってきたので、周りの者たちもコッソリと様子を伺い始めた。

 立ったまま、うつむいている2人は、新入社員の男性と、そのトレーナーの女性だ。新人はもちろん不慣れなところはあるが誠実に働いているし、5年目でトレーナーを任された彼女は若手のホープでもある。
 そんな2人に、いったい何があったのか。一方的に言われ続けたトレーナーの女性が、ようやく口を開いた。

 「しかし、課長……」

 それが何かの合図になったように、X課長は立ち上がるといきなり大声を出した。

 「そもそも、何もわかってなぁい!」

 その後は、いわば「ブチ切れた」状態になってしまった。
 うつむいたままの新人と、唇をかみしめるトレーナー。ところが課長の言っていることには、特に何かの中身があるわけではない。

 「だから、だから、本当に!」

 そんな感じで、単なる罵詈雑言になっている。そして、ついに女性社員が声を上げて泣き始めてしまった。

 それでも、課長はまだ怒っている。さすがに見かねた者が落ち着かせようとしても「うるさい!」と言って、暴れそうな勢いだ。まずは若い2人をその場から離して、しばらくするとオフィスには奇妙な静寂が漂った。

 「まるで、テロのようだった」

 ある社員は、そう思い起こしている。誰かが「血の金曜日」と言って、その事件は有名になった。