
三浦知良の「引かない」美学
「引き際」という言葉がある。
この言葉はいろいろな使われ方をする。恋愛のもつれ話の際に登場したりもするが、今回は、「第一線や現役から退く」という意味で使わせていただく。
で、この引き際を、自ら決めることができる人は意外と少ない。一般的には政治家やスポーツ選手くらいで、ビジネスの世界では経営者などに限られるのが現実だ。
それもまた、一流の人に限られる。上記のような職種であっても、落選や戦力外通告などにより「引かざるを得ない」人の方が多いだろう。
一般の会社員であれば、その命運はほとんどの場合、会社に握られている。自らの意思で引き際を考える前に、肩たたきなどの形で何らかの“通告”を受けてしまうのが普通だ。
ただ、自らの自由にはならない引き際であっても、ミドル世代ともなれば、心のどこかでその準備を始めているのもの。だから、現役を長く続けているスポーツ選手などの引き際に関しては、多くの人が興味を抱くのではないだろうか。
かつてトップクラスだった選手でも、力は徐々に衰える。実績があり、指導者への道が用意されていても、中には現役にこだわる人もいる。
齢を重ねてからの身の処し方は難しい。この連載の当初に、「プライドを畳む」 ということを書いた(「いよいよ50代。自分のキャリアをどう見切る?」)。捨てるのではなく、畳む。
では、彼らは自分のプライドをどう向かい合っているのだろう?
そんなことを考えるとき、必ず思い浮かぶ選手がいる。三浦知良だ。
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