もう「頑張り」だけでは通用しないのか?

 Fさんは、ふと思い立って大学同期のRさんに連絡してみた。業種は違うがメーカーに勤めていて、経営企画関連の仕事をしているはずだ。やはり体育会の出身である。

 お互いに時間の調整がついたので、食事しながら話すことになった。近況報告もそこそこにC君の話をすると、途中でわかったように「ああ、そういうことね」と言い出す。

 「いま、いろいろな会社で問題にはなっているんだよ」と、Rさん。「何が?」と口にする前に、「俺らのような、体育会出身がさ」と続ける。
 体力はある、タテ社会には慣れている、そして根性もある。そうした体育会出身者が、若いうちに壁に当たるケースが増えているというのだ。多くは、現場の仕事が変化していくことに対応できない。まさにC君のようなパターンだ。

 人事にも近く他業種との接触も多いRさんだから、情報は豊富だ。

 「なんか、30歳そこそこにして、『もう“定年”かよ』というくらいの、燃え尽き方のやつもいるみたいだよ」
 「でも、まだ就職では強いんだろう?」とFさん。
 「まあ、まず人手不足だし現場は喜ぶ。でも、若い奴は本当に傷んでいるやつも多いと思うぞ」

 自分たちが若い頃の現場は、良くも悪くも「頑張り」が通用した。だから、そんな年代で、体育会出身者が壁に当たることはなかった。
 壁があるとすれば、管理職になる頃からだろう。Fさんも、Rさんもそのことは薄々わかっていた。頑張り一本で行き詰まる体育会の先輩を見ていたからだ。だからこそ、現在のポジションがある。

 「しかし、30歳くらいで壁か……」
 呟く、FさんにRさんが言う。
 「それどころか、俺たちだってわからんぞ。いまは、どうにかなってるけど、会社はすごい勢いで変わっている」
 Rさんは続けた。
 「持株会社は海外のM&Aを進めて、知らないところで経営はどんどん変わっている。外国人や社外からの役員もっと増えれば、雰囲気がガラッと変わるだろう。会社とすれば日本市場が縮小するから、海外で生き残るという策だろうけど、それでは全く別の会社みたいなもんだよ」

 「俺たちもいつ“定年”になるかわからんよ」
 そう語るRさんだったが、「だからこうしよう」という話になるわけではない。二人とも言葉少なになっていった。
 さて、C君には何と言おうか。あえて背中を押すこともないが、無理に引き留めることもないのかもしれない。
 Fさんは、それよりも自分のことの方が心配になりはじめているのだった。

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