もう一度「熱い仕事」ができるのか?

 どうやら、入社して間もない女性社員で相当できる者がいたらしい。アタマの回転も速く、プレゼンテーションも上手で、その上相手の懐に飛び込む度胸もある。

 その姿に刺激されて、周りの仕事スタイルもどんどん変わり、上司も評価する。そうした中で、昔気質の先輩も異動でいなくなった。気がつくとC君の居場所がなくなっていたというわけだ。

 では、どこに転職するのか?とFさんは気になった。どうやら行き先は、就転職支援などをおこなう企業のようだ。人材争奪が激しくなる中で、最近伸びている企業だ。Fさんも名前は知っている。

 おそらく、営業人員は不足しているのだろう。体育会出身で、知名度の高いメーカーに勤めるC君であれあ「ぜひ欲しい人材」なのだ。仕事の現状について説明するC君の心を見透かすように、先方はこう言ったらしい。
 「うちに来れば、もう一度“熱い仕事”ができますよ」
 いまお勤めの会社のような伝統はないけれど、みな若くて活気があります。C君なら「まだまだ成長できます」と言われたらしい。

 やれやれ。Fさんは心の中で、呟いた。いま、強く引き留めても彼のモヤモヤを晴らすことはできない。かと言って、まだ決断しているわけではなさそうだ。だからこそ、相談しに来たのだろう。
 もしかしたら、まだ自分の「居場所」もあるかもしれない。同じ体育会OBのFさんへの甘えもあり、声をかけてきたようだ。
 「もう少し、考えてからでもいいんだろ?」
 Fさんの問いにC君は頷いた。まだ、猶予はあるようだ。

次ページ もう「頑張り」だけでは通用しないのか?