後輩社員からの唐突な相談

 「少々、お話を伺いたいことがあるのですが」
 妙に丁寧なメールが、Fさんの元に届いた。大学時代の後輩で、同じ会社にいるC君からだ。

 FさんとC君は、都内私立大学の体育会出身だ。40代半ばになろうとするFさんと、30代になったばかりのC君。年齢は離れているものの、彼らのネットワークは強い。
 特にC君は直属の部下だったこともある。最近は会っていないが、折に触れて声を掛け合う仲だ。

 2人の働いている企業は、大手の飲料食品メーカーだ。全国にネットワークを張りめぐらし、津々浦々まで供給する。扱うアイテムは多く、流通や飲食店に対しても細かい対応が必要だ。

 決してスマートな営業現場ではなく、泥臭い世界だ。人口減少、若者の減少など市場が伸びないことは明白な状況の中で、限られた売り場の奪い合いとなる。もちろん競合企業も必死になっている。

 そうした空気の中で、体育会出身者はそれなりの存在感を示してきた。毎年一定の人数が採用されることは、それなりの「常識」で、入社式には一目でわかる体格のいい一群が目に付く。
 もちろん現場でも実績を積んできた。役員にも体育会OBはいるし、大学を超えた見えないネットワークがあるのだ。

 Fさんは営業企画部門で、いわば現場の司令塔のような立場にある。もちろん全国の動向は十分につかんでいるが、個々人の動きまではわからない。
 だから、Cさんからのメールが来ても、「何だろう?」という感じだった。まだ独身だったはずだから、「そろそろなのか?」と勝手に思っていたくらいだった。