「管理組合」で頑張ってみたけれど

 ちょうどその頃、マンションの管理組合の理事が交代することになった。Wさんにもお鉢が回ってきたのだが、これを機会にちょっと入れ込んでみようかという気になった。

 というのも、築15年を過ぎてきて今後の補修など課題が山積みなのだ。駐車場にも空きが出てきて、収入も減少傾向にある。まさにコストダウンが求められる状況で、かつて購買で活躍していたWさんは色々とアイデアを話した。

 理事長は既にリタイアしたZさんだ。うんうん、と聞き上手ではあるが早々にことを動かすタイプではない。業者についても相見積もりをとってはどうか?というWさんの提案に対しても、慎重だ。他の理事も似たような感じである。

 ある日の理事会の後、WさんはZさんに声を掛けられた。「時間があったら、お茶でもいかがです?あるいはビールでも」

 まだ夜の9時前だったので、Zさんの自宅でビールを飲みながらのよもやま話になった。Zさんは自分の現役時代の話をしてくれるのだが、嫌味にならずなかなか面白い。業界が全く異なるだけに、あっという間に時間が経つ。

 「ところで…」とZさんが切り出した。「理事の仕事なんていうのも、面倒なことばかりなんだけど」と身近な話である。

「まあ、誰も誉めてはくれないんだよね」
「はぁ、そういうものですかね……」 「ただ、たまに『ありがとう』と言ってくれる人がいてね。ちょっとした苦情への対応だったり、小さなルール作りだったりするんだけど」

 無言で頷くWさんにZさんが言った。

 「若い時は人から『すごい!』って言われるのが嬉しかったけど、そういう機会はどんどん減るもんだよ。でも、『ありがとう』って言われることは意外とあるもんなんよね」

 Wさんはハッとした。そして、後になってから何度も「あの一言が転機だったと語っている」