みんな、「できる人」になりたい

 「できる人」というキーワードは多くの人が関心を持つようだし、実際、そうなりたいと思うのが普通なのだろう。ネットで「できる人」を検索するとよくわかる。

 「仕事ができる人」には、「6つの特徴」「10の行動」「9つの瞬間」「30の方法」などがあるらしいし、どうやら仕事は「5分で終わる」ようだ。そして、これだけの記事が溢れているということは、単純な事実を示唆している。

 みんな、「できる人」になりたい。

 そして、ほとんどのビジネスパーソンは多かれ少なかれ「何かができない」ことに悩んでいる。何でもできる人はごくごく少数だし、だからこそ昇進にも差が出るし、トップになるような人はわずかしかいない。

 そんなことは、会社勤めをしていれば誰だってわかってはいる。実際、最初から社長になろうと思っている人は少ない。

 新入社員を対象にした調査を見るとおもしろい(産業能率大学「新入社員の会社生活調査」)。「あなたが最終的に目標とする役職・地位は?」という項目がある。2015年だと「社長」と答えた人は11.5%だ。

 「10%あまりしかいない」と見るか、「10%もいるのか」と感じるのかは人それぞれだろう。ただし、これを時間軸で見てみると興味深い。

 10%前後になったのはこの3年くらいの傾向で、その前は、波はあるけれど15%くらいの数字だった。90年代は20%以上の年もあった。そして、公開されているデータで一番古い1990年は、何と34.4%もの新入社員が社長を目指していたのである。

「『社長になりたい』が3割」世代が直面する現実

 そして、この年に入った新人もこの春には50歳に近づいていることになる。自分の将来については、おおかた見当がついてくる年代だ。

 まだまだ社長になるかもしれない、と思っている人もいるだろうし、そういう方もこの欄を読んでいるかもしれない。しかし、多くの人はどこかで自分のキャリアに「見切り」をつけるはずだ。

 それが何歳かは人にもよるだろう。20代で早々に地位への興味を失う人もいれば、還暦近くまで己の出世に執着する人もいる。ただし、どこかで自分のキャリアを見切るということも大切になってくる。それが現実だ。

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