何も疑わなかった花形企業への就職

 それは、もう3年以上前のことになる。Eさんの会社では、大規模な早期退職を行った。一定年齢以上を対象に、退職金の割り増しなどで人員削減を進めるよくある話だ。

 Eさんは応募した。それは、当時の空気からすればある意味当然のことだったと思っている。

 Eさんが働いていた会社は、大手の電機メーカーだった。コンピュータ関連分野がメインなので、今ならば「ITメーカー」ということになるのだろう。しかしEさんが就職した1990年代前半において、まだその言葉は一般的ではなかった。

 ビジネスで最も大きなウェイトを占めていたのは、大型コンピュータのシステムだった。納品先の多くは大企業や官公庁あるいは大学だ。個人向けの製品も出始めてきたが、主力はあくまでも大型システムだ。

 Eさんはその会社の開発部門で、エンジニアとしてキャリアを積んできた。大学院で電子工学を専攻し指導教官からの評価も高かったEさんは、「当然の選択」として花形企業に入り、専門知識を生かした仕事に就いた。その後の社会人生活は、しばらくは順風満帆だった。

 そんなEさんが「異変」を感じ始めたのは、入社して10年を過ぎた頃からだった。