あの店でも、G君はずっと笑顔だった

 それから2年が経って、Uさんは経営企画で次々とプロジェクトを手掛けていった。想像もしなかったキャリアになったけれど、満足度は高い。

 おもえばG君の涙が、その後の人生を決めたようなものだろう。

 そして、ミドルのキャリアは、自分の頑張りだけでデザインできるものでもない。あの時G君に賭けて、それが実ったことでUさんの歩む道は変わった。それは、結果として後輩が拓いてくれたようなものだ。

「壁に当たったら、思い切って部下を信頼して任せてみる」

 それが、いまのUさんの信条だ。

 そして、G君は米国への赴任が決まった。折に触れて会ってはいたが、2人だけの送別会はあの日の店に行った。

 もちろん、G君はずっと笑顔だった。

■今回の棚卸し

 多くの企業において、若手の育成はミドルに課せられたミッションになっている。場合によっては、「義務」のようになっているケースも多い。

 しかし、若手を育てることは自らの刺激になるとともに、組織全体の活性化にもつながる。

 まだ力の足りない社員がいる時こそ、自分と組織の「足りないもの」を発見できるチャンスだと捉えたミドルこそが、次のキャリアを拓いていけるのだと思う。

■ちょっとしたお薦め

 藤原伊織氏の「シリウスの道」は、広告会社を舞台にしたミステリー長篇だ。過去から連なる主人公の謎が小説の中核となるが、日々刻々と変化するビジネスの描写にも引き込まれる。

 中でも若手社員の成長譚ともいうべきストーリーには引き込まれる人も多いのではないだろうか。「チームのストーリー」としても面白く読める一冊だ。