経営企画部に異動になった理由

 Uさんは、入社以来現場のビジネス一筋で、いわゆるコーポレート部門の経験はない。しかも「経営企画」というのは、会社の中枢であり「別世界」のイメージがあった。

 担当する仕事は、主に人材育成や働き方についての改革を考えることだ。部下たちも多士済済で、労務畑出身もいればMBAホルダーもいる。

 ただ、このようなテーマは本来人事部の仕事ではないのだろうか?それが、内示を受けてUさんが真っ先に抱いた疑問だった。

 赴任して1カ月が経ち、落ち着いた頃にUさんは担当の執行役員から食事に誘われた。いろいろ話しているうちに、Uさんの疑問を先回りするように、役員が言った。

「まあ、敢えて人事部には任せなかったんだよ」

 そして、言葉を選ぶように続けた。

「どうしても、経験や知識が目を曇らせることがあるからね」

 本人も人事部長の経験があるだけに、いろいろと思うところがあったのだろう。人事部の前例踏襲の発想では、いずれ行き詰ると考えてのことらしい。

 そういえば、Uさんの会社から米国のネット企業に転職するケースも目立ってきた。しかも、相当若い企業へ思い切って飛び込んでいく20代もいる。このままでは、人材獲得競争に後れをとるという危機感が強いようだ。

 そんな話をしているうちに、役員が思わぬことを口にした。

「そういえば、G君はよく頑張ったみたいだな」

 ニコリともニヤリともつかない笑いを見た時に、Uさんは今回の異動の背景を理解した。G君に賭けたあのプロジェクトは、意外なところからも注目されていたのだろう。