もう一度、部下のセンスに賭ける

 すっかり寡黙になったG君をなだめたり励ましたりしながら店を出て、Uさんは帰路についた。しかし、アタマの中では同じことを考え続けている。

(さて、G君をどうすればいいんだろうか?)

 同期には、そろそろ海外赴任する者も増えている。しかし、G君の仕事は国内のビジネスが主だった。そんなこともあって、英語力もあまり伸びていない。

 もう少し、厳しくしておくべきったかと今さら悔やんでも仕方がない。たしかに、今の部署は自由な半面、安易な道を選んでもどうにかやっていける部分がある。

 1つの選択肢は、転勤させて、より自立を促すということだろう。ちょうど、人事からは「そろそろどうか?」と聞かれている。ただし、この場合は国内ということになりそうだ。

 一方、現在のメディア関連の仕事は東京に集中する傾向にある。いま地方に行くことは、G君のキャリアにとって本当にいいことなのだろうか?

 他のチームリーダーを見ていると、この位の年次の部下については、どんどん外に出している。

「だって、人事の言うことにいちいち意見していたら、こっちがマズいことになるでしょ」

 全く悪びれずに、そんなことをいう者もいた。30代になった部下を「育てる」などということは、あまりアタマにないらしい。

 それでも、Uさんにはこだわりがあった。G君には、まだまだ「伸びしろ」があるように感じたのだ。センスがあるのだからもう一度磨いてみよう。

 その決断は、想像以上の変化をもたらした。