「筋肉アタマ」上司の限界

 年末年始になると、あちらこちらのメディアで読書についての特集が組まれる。「今年の収穫」とか、「正月休みに読みたい本」とかさまざまではあるが、ついつい気ばかりが焦る方々も多いのではないだろうか。

 ビジネスパーソンは、勉強しなくてはならない。それは、もはや当たり前のことのようになっている。ところが、肝心の管理職世代になると、人によって「勉強する」ことに対する濃淡があるようだ。

 大手広告会社の営業部に所属するK子さんは。そんな上司を見てはイライラすることが多い。
 K子さんは、40歳を前にしてすでにチームリーダーを任されている。就職活動は厳しかったし、入社後も経済環境は悪かった。バブルの昔話は禁句で、経費は制限される状況でも「勉強し続けなくては」という意識は強かった。

 それはK子さんだけではない。同世代の仲間には勉強熱心な人が多い。そうした努力を会社も評価してくれたから、あちらこちらの部でリーダーが若返ってきた。
 その一方で、「学ぼうとしないオジサンたち」はまだまだたくさんいる。

 K子さんの直接の上司は、「勉強する人」をどこか馬鹿にしていた。研修に参加しようと許可をもらおうとすると、「お勉強頑張ってね」とどこか揶揄したような口調になる。
 もちろん本人は、勉強が嫌いでろくに本も読まない。紙の新聞を毎日読めば、それで十分だと思っている。

 学生時代にスポーツをやっていたそうで、いわゆる「体育会系」だ。しかし、そんな風に言うと、体育会出身者の若手は不服そうに言う。
 「本当の体育会は、もっと頭を使うし努力するものです」
 つまり「体育会もどき」ということなのだろう。いつ間にか、「筋肉アタマ」と言われるようになった。もちろん、本人のいないところではあるけれど。

 「結局は人間力だよ」
 それが、飲んだときの口癖だった。簡単にいえば「古いタイプ」なのである。そして、古いタイプをかわいがる役員もいるから、そうした上司もまだそこそこに健在だった。
 ところが、昨年に役員人事があった。これが近年まれに見る「大激震」で大幅な世代交代となり、「古いタイプ」は一掃された。
 そして「筋肉アタマ」の上司も、第一線を外れた。

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