派生商品の「功」は大きい

翻って国内市場ですが、スーパードライ本体について、これまで原材料の部分など、なかなか大きく刷新することが難しかったという印象があります。

小路:やはり、スーパードライで変えてはいけない部分はなんなのか、それから市場ニーズ、顧客のニーズに合わせて変えていい部分はなんなのか。それは事業会社、アサヒビールの平野伸一社長も明確にしていると思います。私がアサヒビールの社長だった時にエクステンション(派生商品)の戦略をとり、スーパードライのブランド力が高まったという手応えもあります。

エクステンションについては、あまり浸透していないという見方もありますが、功罪についてはどうですか。ブランド力が拡散してしまう部分はなかったでしょうか。

小路:エクステンションをやらなければ、支持層をもっと失って、ブランド力は落ちていたでしょうね。例えばドライプレミアムですが、私は功は大いにあったと思っています。ギフト市場は量は出ないですが、ブランド力の強化という部分では非常に重要です。ドライプレミアムを出したことで、ギフト市場では過半以上のシェア(推定)を我々は持つことができています。

 また、スーパードライ本体にしても、春に出す限定のピンク色の缶は、若い女性が指名買いするほどの人気です。これは、従来スーパードライを飲んでこなかった層に浸透する上で意味はあると思いますよ。

 ブランドのカニバリゼーションという指摘については、エクステンションによって、それはゼロではないですが大きく数字を左右されたこともありません。実際、スーパードライの(主に小売り向けの)缶製品の販売量は、2016年は1.6%増です。大衆消費財というのは、一度ブランド力が低下したら、坂道を転げ落ちるように弱くなってしまいます。スーパードライはそんなことはありません。

スーパードライに関しては国内販売量の「年間1億ケース死守」というのが経営の大きなテーマになっているような印象もありますが、この点については。

小路:1億ケースに価値があるわけではないんですよ。私と平野社長の間では、スーパードライの1億ケースというのはKPI(重要業績評価指標)でもなんでもない。むしろ、スーパードライの商品価値、事業価値というのは、スーパードライの収益性をどれだけ高めていられるかということなんです。それは数量を伸ばさなくても維持でもいいから、収益性を高めることが大事だということなのです。

 確かに、今までスーパードライは年間1億ケースを売ってきた。それは消費者にたくさん売れているものは、みんなが飲んでるから美味しいんじゃないかという消費者心理があるから、1億ケースを訴求してきた部分も過去にはあります。しかし、今ではそうした打ち出し方はしてないですね。

 スーパードライのブランド指標が高まって、エクステンションも含めた商品戦略でユーザーをつなぎとめている。変えてはいけないことと変えることを明確に分けて、ブランド戦略を展開してきたということが重要なのであって、繰り返しますが、1億ケースという数字が重要なわけでは全くありません。

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