日本における女性リーダーの育成は先進国のなかで大きく遅れをとっている。企業内でどのような経験を積んだ女性が、役員に就いているのか。どのような「一皮むける経験」がリーダーシップを育むことにつながったのか。キャリアの軌跡をつぶさに追うことで、企業内での女性リーダー育成のヒントを探る。

 第8回目は、36歳の若さで楽天執行役員となった河野奈保さん(41)。社内では「モバイルの河野」として知られ、モバイル事業を急成長させた実力者である。これまでの歩みを辿ってみよう。

河野 奈保(こうの・なほ)

 1976年生まれ。99年大学卒業後、人材派遣会社、ネット証券会社を経て、英国留学。2003年、楽天に入社。楽天市場事業で営業、マーケティング、編成を担当する。05年からはモバイル事業の責任者を務める。12年編成部副部長、13年5月執行役員に就く。女性としては最年少の役員となる。同年8月編成部長に就任。同年12月、楽天はジャスダックから東証一部に上場市場を変更。17年2月ECカンパニープレジデント、同年4月常務執行役員。18年7月組織改編に伴い、コマースカンパニーのシニアヴァイスプレジデントとなる。「ECマーケット動向」「女性の働き方」に関する講演も多数。

河野さんキャリアチャート

 36歳で女性として最年少役員に就いてから半年、思わぬ試練が河野奈保さん(41)を待ち受けていた。2013年秋、東北楽天イーグルスの日本一を受けてのECサイト「楽天市場」の優勝セールで、価格の不当表示の問題が持ち上がったのだ。

 楽天市場の担当執行役員だった河野さんは、楽天市場品質向上委員会の委員長に就いた。三木谷浩史社長が秋に記者会見を行い、翌年春、今度は河野さんも記者会見で矢面に立ち、居並ぶ記者を前に調査結果を報告した。

 問い合わせが殺到し、メディアからの批判を浴び、寝る間もなく対応に追われた。この間の記憶はほとんど飛んでいる。ただ、ひたすら考え続けたことだけは鮮明に覚えている。顧客をいかに守っていくか。失った信頼をどう回復するか。楽天は、いまやベンチャー企業ではない。多くの人の生活のインフラとなりつつある。その信頼を裏切ってはいけない。「攻める、攻める楽天」として走り続けてきた。しかし、攻めることと同じくらい、守ることも大切だ。そのバランスをとることが求められている――。こんな考えが頭の中を駆け巡った。

 会社の社会的責任を肌で感じることとなった。そして会社をもう一度成功させるという思いも沸き起こってきた。弱冠36歳にして、早くも経営者としての修羅場を経験することとなった。

楽天に入社した2003年当時は「親も友人も楽天のことを誰も知らなかった」。ところが東北楽天イーグルスの活躍でその名が知られることになる。開幕戦は球場に足を運んで観戦。勝利を報じた翌日の新聞は、嬉しくて今でも大切に手元においている