48歳でカルビーに転職。新事業立ち上げに挑む。

 2017年10月、ルミネエスト新宿店に「Yesterday’s tomorrow」という一風変わった店がオープンした。プロデュースをしたのは、鎌田さん。日本各地の菓子メーカー約120社の菓子800点あまりを集めた店だ。人気は、店に入ってすぐの菓子量り売り「ぐるぐる」のコーナー。約200種類もの個別包装の菓子から好きなものを選んで袋に詰め、1g3円で買うことができる。

Yesterday’s tomorrow
ルミネエスト新宿に開いた菓子店「Yesterday’s tomorrow」。全国800を超す種類の菓子が並ぶ。右が量り売りコーナー「ぐるぐる」
店内には昔懐かしいお菓子、自社製品のほか、文具も並ぶ

 「あっ、このお菓子は近所のスーパーにはないよね」と、嬉しそうに菓子を手にする、いがぐり頭の小学生。友人と連れ立ってきた女性客は「懐かしいねえ」と菓子を手にする。べっこう飴やラムネ菓子など、昔懐かしい駄菓子をついつい夢中で選んでしまう。「1円の価格競争に苦しんでいるような、地方のお菓子メーカーさんをもっともっと元気にしたい。お客さまにはお菓子の楽しさを思い起こしてもらえるような場をつくりたかった」と鎌田さん。菓子業界全体の活性化を目指している。

 2011年に始まった、作りたて、揚げたてのポテトチップスを味わうことができる直営店「カルビープラス」19店舗の運営も手掛ける。国内にとどまらず、香港に続いて、今年はマカオにも出店した。量販店にはないメーカー直営店で、国内外でファンづくりをしていきたいという。今後は、消費者と双方向のコミュニケーションが取れる仕組みも作っていく予定だ。

 鎌田さんを招いて「(社内の)空気が変わった」と松本前会長はいう。新しいものを探して、社外に、そして海外にもすぐに飛び出していく。(全国の支社工場を経営者が回る)タウンホールミーティングでも、鎌田さんはよく喋る。「えっこんな人がいるんだと」と社員はびっくりしているという。(2016年の松本前会長へのインタビュー)。

 新天地に転じて3年が経った。「カルビーの強みを生かせば、未来に向けて新しいビジネスが生み出せる」と、鎌田さんは力強い口調で語る。

人生100年時代を見据え、転職を考える女性幹部が出てきた

 女性幹部がヘッドハンティングで他社に移る動きが出てきている。リクルートエグゼクティブエージェントのディレクター、渡部洋子さんによると「社外から役員候補となる人を招くにあたり、できれば女性が欲しいというケースが増えている」という。

 松本前会長は、鎌田さんを引き抜いた事情をこう語っている。「仮に男性だったとしても、あれだけの実績があれば引き抜いていたかもしれない。しかし、女性の幹部を増やしたいという会社の方向性に合っていたことは事実です

 男女問わず、経営陣として欲しい人材の要件に変わりはない。しかし今、女性役員を増やそうという流れのなか、女性ならなおいい、という企業は少なくない。

 こうしたヘッドハンティングの話を受ける、女性管理職の意識にも変化がみられる。「人生100年時代といわれるなか、少なくとも70歳くらいまで働きたい。そう考えると、今のまま一社で積み上げてきた、一本足のキャリアでいいのかと不安を抱く人が出てきている」と渡部さんは言う。現在勤める企業よりも、少し規模が小さくなっても中堅・中小企業で役員など一つ上のポジションをとっていきたい、あるいは他社の社外取締役を兼務することで軸足を増やしたいという相談が増えているという。

 この5月、カルビーに執行役員人事総務部門本部長として迎えられた武田雅子さん(50)も、まさに一本足キャリアを問い直して転身を決めた。前職のクレディセゾンでは、営業、人事部門で29年活躍し、取締役まで昇進した。しかし「人生100年と考えると、このまま1社に勤めあげていいのかと考えた」。ひとつのルール、ひとつの価値観では通用するが、はたして社外でも通用する人材なのかと自問自答。「カルビーなら次のフェイズを作れると思った。もうひと踏ん張りしよう」と、あえてコンフォートゾーンから出る決意をしたという。

 一皮むける経験を繰り返した女性幹部は、社内の宝であると同時に、社外からみると欲しい人材である。女性経営層の流動化を、企業はどう生かすのか。ダイバーシティ経営の真価が問われるところである。

カルビーでは、子供向けの食育イベントも行っている