これまでシリーズ3回で、どのような女性が役員に就いているのか、どのような「一皮むける経験」がリーダーシップを育むことにつながったのかを追ってきた。今回は、その後に続く「女性課長」編。女性課長のキャリアの軌跡は、上の世代とはどこが違うのか。リーダーシップの取り方はどのように違うのか。日本航空、本田技研工業、みずほ証券の30代~40代の3人の女性課長らに話を聞いた。
「あの人たちは特別だから、とても真似できない」
女性社員のロールモデルとなるはずの女性役員は、下の世代からこう評されることも少なくない。パイオニアとして、時には男性型の働き方に合わせなければ、組織で生き残ることができなかった。女性役員らが社会に出たころは、男女による処遇差が根強く残る職場で、任される仕事に男女差があったり、評価が必ずしも公平ではなかったりという職場もあった。その中で頭角を現したのだから、「特別な人」という評価はあながち外れてはいないだろう。
では、一回り下の世代はどうだろう。現在課長職に就く女性社員のキャリアの軌跡をみると、女性役員の轍とは少し違うものが見えてくる。キャリアの築き方、またリーダーシップの取り方がどう違うのか、3つのポイントで見ていこう。
20代のうちから「武者修行」の機会を与えられる
第一に、若いころから「武者修行」の経験を積んでいることだ。若くして会社を代表する立場で海外に出る機会を得た人もいる。男性ならば、総合職で将来幹部候補と見込まれる人ならさほど珍しくないことだが、女性の場合はこうした成長機会に恵まれるのは例外であった。前回紹介したホンダ執行役員の鈴木麻子さんのアジア赴任も、女性社員としては先駆的事例だ。
ところが役員の一世代、二世代下の女性課長に聞くと、30歳前後の若さで海外で鍛えられたことで大きく成長したという話が聞かれるようになる。課長世代となると、若いうちから男女差なく「一皮むける」機会が与えられる人が増えているようだ。
1992年に日本航空に総合職として入社した堀尾裕子さん(48)は、現在は路線事業部で国内線・国際線のネットワーク収入最大化を図る企画部署で課長職に就く(注1)。20代後半のとき、運航部で参加した国際会議の緊張感が今でも忘れられない。

米マイアミで開かれた国際航空運送協会(IATA)の会議に、20代後半にして会社の代表としてひとり送り出された。世界各国の300社近い航空会社が参加する協会で、各社からの参加者が国際線の安全かつスムーズな運航のために話し合う。
「わが方はどうしますか?」 同じく日本から参加した国土交通省の役人から振られたときは、驚いた。 「え?日本のこと? 日本航空のこと?」 いずれにしても、会社を代表してコメントをしなければいけない。汗をかきながら、 「5年後までには対応するよう頑張ります」 とコミットメントをする発言をした。
英語で意味がとれなかったところは、日本人のみならず、海外エアラインの出席者にも教えを請うた。死に物狂いだった。国際会議に送り出されるとき、上司はひと言「任せたぞ」。助けてほしいと言わない限り、手助けしてもらえない。男女関係なく機会を与える上司のもとで鍛えられた。
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