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女性初の執行役員に至るまでの、4つの成長ポイント

 女性初の執行役員になるまでの道筋を今一度振り返ってみると、絹川さんの成長体験には4つのポイントが挙げられる。

 一つは、育児休業と幼い息子の入院を機に、仕事を続ける覚悟を決めたこと。こうした「ライフイベント」が、キャリア形成に大きくかかわるのは女性ならではの特徴だろう。この時に覚悟を固める上で決め手となったのは、「僕が辞めるという選択肢もある」という夫のひと言だった。旧来の役割分担意識にとらわれないパートナーがいたからこそ、仕事を続ける意義を深く内省することができた。それが仕事観の根幹となり、部下に向き合う上でのぶれない姿勢となっている。

 二つ目に、あえて「コンフォートゾーン」から引き離し、成長を促した上司の存在だ。育児休業から復帰後、子どもが小学校3年まで企画部門に配属されたのは、子育てと両立しやすいだろう、という会社側の配慮もあったようだ。ところが、そのままでは成長は望めない。子育ての時期を見計らい、営業で再挑戦させるという上司の目配りがあった。

 三つ目は、修羅場経験で胆力をつけたことだ。大きなトラブルで「部長をクビ」になり辛酸をなめたからこそ、見えてきたこともある。失意のなかで就いたポストも、後で振り返れば貴重な経験となった。つらい経験で「一皮むけた」からこそ、再チャレンジの機会を与えられたときの腹の座り方が違った。これが役員の道へとつながっていく。

 最後に、合併後に未経験の分野であるリテール部門に手を挙げて異動したことだ。今度はみずから「コンフォートゾーン」から出る決断をしたともいえる。数字の見える分野で実績をみてもらおうと挑戦したわけだ。リスクの伴うチャレンジだが、それを乗り越えるだけの実力はすでに備えていた。その勝負は、吉と出た。

 こうしてみると、男女関係なく大きな成長へとつながる修羅場経験があるものの、ライフイベントなど女性特有のキャリアの課題もあることが分かる。女性初の執行役員への道のりは、女性管理職、さらには役員育成のヒントとなりそうだ。