JAアグリあなんスタジアム(徳島県南部健康運動公園野球場)ライトスタンドより
JAアグリあなんスタジアム(徳島県南部健康運動公園野球場)ライトスタンドより

 選手間の声掛けがはっきり聞こえる。セカンドにゴロが転がるとショートが「ゆっくり、ゆっくり」と指示を出す。投手登録でファーストを守る岸潤一郎選手の声がひときわよく響く。

 ビールの販売はなし。内野スタンドでの飲食は禁止とアナウンスがあった。

 尾崎豊の『僕が僕であるために』を登場曲にしている選手がいる。イニング間のキャッチボールに使われる球は土で汚れている。

 風が強い。雨でも風でも座席は汚れるので、タオルのようなものが必須である。日差しも強く、バックネット裏の屋根のある席に移動したかったが、かなり混みあっている。5回終了後に地元の子供たちのパフォーマンスが予定されていて、その家族も詰めかけているのだ。

 徳島IS側の応援席には、阪神タイガースグッズを身に着けている人が複数いた。徳島はやはり関西に近い。かと思うと、東北楽天ゴールデンイーグルスのウインドブレーカー着用者も。そういえば楽天の藤田一也選手は徳島出身だ。

勝利とファン獲得を目指し、シーズンは続く
勝利とファン獲得を目指し、シーズンは続く

「瀬口、頼むぞ!」

 リードを許している徳島ISに得点のチャンスが訪れた。すると、それまで寡黙に見守っていた男性客が、「瀬口、頼むぞ!」と大きな声で発破をかけた。間違いなく、バッターボックスに向かう瀬口拓也選手の耳にも届いている。大学中退後に徳島ISでのプレーを選んだ瀬口選手は、選手名鑑の「今年の目標・抱負」欄に“NPB指名”と記している。

 誰かのファンになるのに必要なのは、理屈ではなくきっかけだ。今後、私は瀬口選手のことが気になって仕方なくなるだろう。今年のNPBのドラフトのテレビ中継も、これまでとは違う気持ちで見ることになるはずだ。

 名鑑では、NPB入りを目指すと公言している選手が思っていた以上に多い。

 応援している側も、チームに勝ってほしいだけでなく、選手にNPB入りという夢を叶えてほしいとも願っているように見える。NPBの試合を見に行ったときには抱かない感情だ。この選手はそのうちメジャーに行くのかなと思うことはあっても、メジャーに行けるように頑張ってほしいという発想にはなかなか至らない。

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