徳島は大阪に近い。徳島市内からなら2時間ほどで大阪の中心部に到着する。だから休みになると多くの人が“なんもない”徳島から、なんでもある大阪へと買い物に出かける。週末の徳島市内は、南の目にはがらがらに映る。

 しかし本当に、徳島には“なんもない”のだろうか。県のサイトを見ると、ところどころで“スポーツ王国徳島”という言葉が目に付く。剣山の周りや吉野川の流域を走る自転車、吉野川でのラフティングやカヌーなどに力を入れているのが伝わってくる。その吉野川中流域にある大歩危・小歩危は風光明媚な観光地。一度は渡りたいかずら橋もある。インディゴソックスは藍染めの靴下だが、青と言えば青色発光ダイオードの発明者の一人である中村修二氏は阿南市に本社を置く日亜化学工業の出身だ。カボスでもシークヮーサーでもないスダチは緑色だが、とにかく、“なんもない”わけではない。プロ野球チームだってある。慣れてしまっているのだろう。

「1億稼げるようになりたい」

 その徳島でいかにして野球に、インディゴソックスに関心を持ってもらうか。これが目下の南の課題だ。

 前回紹介したように、インディゴソックスは球団直営のうどん店を持っている。日々の収入を得るためのものだが、この店にはもうひとつ、期待している機能がある。

 「チームのアンテナショップにしたいと考えています。平日で約400人、週末なら800~900人のお客さんが来てくれているので、一月あたりのべ2万人と接触が持てます。会計時には金額に応じて特定の試合日のチケットをプレゼントすることも考えています。そうすることで選手に親しみを持ち、チームに関心を持って、球場に来てくれる人を増やしたいのです」

 試合日を指定するのは、ホームでの公式戦のうち、スポンサーがついたいわゆる“冠試合”の日に、より多くの観客を集めたいからだ。

 目を県外に転じ、徳島出身者の支援を得ようとクラウドファンディングも行っているが、目標額の100万円に対し、残り16日の時点で支援金額は13万円にとどまっていた。

 南も県外の視点の持ち主だ。京都府宇治市出身で、中学時代は読売ジャイアンツの内海哲也投手と同じチームでプレイし、高校、大学でも野球部に所属していた元内野手。もちろん、プロを目指していた。

 最初にプロになるのを意識したのは小学生の時。和気藹々としていたはずの親戚の集いに、それまでと違う空気を感じるようになってからだ。

 「原因までは分かりませんでしたが、祖父母のところに大きな借金があると知ったのです。金額は、数千万円ほどあったと記憶しています。うちはどれくらい負担することになるのだろう、おとん、おかんの稼ぎで返せるのだろうかと心配になり、また、自分の代にもその借金が残るのではという恐怖感もありました。だから、1億円稼げるようになりたい、そのためにプロ野球選手になりたいと思ったのです」