大学生を店長に採用し農村部での「起業」を支援

 全国に広がる農村タオバオは、洪さんのような20代の若者が支えている。アリババは、大学生を対象に農村タオバオの店長を募集。これまで、300の県で平均2500人ずつが応募しており、このうち各県で200人前後が採用されている。合計すれば5~6万人程度の雇用を創出したことになる。

 これらの店長は、アリババから農村タオバオを運営するインフラを提供され、自らが店舗の“オーナー”として起業する形をとる。いわば、コンビニエンスストアのフランチャイズシステムのような格好だ。店長に採用された若者に対して、アリババはパソコンを無償で供与するほか、信用補完をしてクレジットカードを所持できるように支援し、カードの支払いについても補助していく。

 当然、洪さんの例で見た通り、十分な売り上げを確保できなければ身入りは少ないが、自らが店長となって事業を大きくしていける可能性がある。農村部の所得向上にもつながり、アリババにとっても顧客となる新たな中間層を育てるという意味で期待が持てる。

 働き口がなかなかない農村で、農村タオバオは若者に起業のチャンスを与えることで、IターンやUターンにつながる可能性を秘めている。農村タオバオでは、消費者がタオバオでモノを買うだけでなく、逆に農村のモノをECで売る手助けもする。将来的には、都市部の病院の番号札を農村タオバオで入手できるようにしたり、公共料金の支払いをできるようにしたりする計画もあり、生活のインフラとしての機能を果たしていく。まさに、公共サービスの担い手となる「ユニバーサルサービス」としても性格も帯びていく。

 農村事業の責任者である孫利軍(スン・リージュン)総経理は「中国政府に対して、アリババが無料で創業(起業)モデルを提供しているということ。(『生産性の低い農業』『インフラのない農村』『低所得の農民』という)『三農問題』を解決する手助けをしたいと思っている」と話す。政府に代わって生活インフラを整備するまでの巨大企業となったアリババ。その取り組みが、農村の未来を左右する可能性まで秘めている。