【西の雄「灘」の真のすごさとは?】
 生徒数当たりの東大・京大合格者数では開成を上回る西の雄、灘高校。開成と同じく、新興校や公立校の人気が高まっていることなどどこ吹く風で、トップ校の地位を維持している。灘高出身者の藤井清孝・コニカミノルタ常務執行役は「灘の真髄は切磋琢磨」と説く。

灘高校出身者は型にはまらないイメージがあります。藤井さんのプロ経営者としての経歴は「灘っぽい」と感じます。

藤井清孝(ふじい・きよたか) 灘高校、東京大学法学部出身。新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社後、SAPジャパン、LVJグループなどの社長を歴任。2017年から、コニカミノルタで常務執行役。(写真:尾関裕士)

藤井清孝・コニカミノルタ常務執行役(以下、藤井):私は高校からの編入ですが、生徒はみんな自分が小中で1番の成績だった子ばかりです。みんな自信はあるんだけど、灘の中で順番をつけられる。小中で1番でも灘だと100番だったりするわけです。全く同じ物差しで順番をつけられるのは高校が最後ですよね。そこで、自分がどうやったって敵わない奴がいるという原体験が灘ではあります。ビジネスにおいても大事な体験だと思いますね。免疫をつけるという意味でも、早いうちに経験すべきことです。

 私も入学試験は一桁の順位だったけど、灘に入ると全く敵わない奴がゴロゴロ。灘はスポーツも盛んで部活をやっている生徒も多い。それでも成績はいい。みんな同じ境遇でライバル。競争という化学反応を通じて、戦友みたいな感じになりますね。

 お互いに負けたくはない気持ちを持って切磋琢磨する。これは学校も企業も、優秀な組織の共通点だと思います。相手を蹴落としてやろうとか、足を引っ張ろうとかいうことは考えない。直球で勝ちたい。そんな気持ちをみんなが持っている。

 灘で手に入れた最も大きいものは自信。こんなすごい奴らとやりあってきた。だから、どこに行ってもなんとかなるという自信がつきました。

灘の同級生は『戦友』

どうやったって敵わない人がいると、モチベーションが下がったりしませんか?

藤井:そこは素直に受け入れます。すごい奴はすごいと。当たり前すぎて誰も言いませんけど、灘は関西にあるということが重要なんだと思います。強がったりして格好つけるのは関西では格好悪いんですよ。正直が大事。だから、負けたら素直にすごいと認める。

妬み、僻みがない。

藤井:そう。負けたくないけど相手は認める。そうやって競ったライバルが、社会で偉くなると自分自身誇りに思えますよね。担任の先生が生徒にテストの答案を返却していくときも、ゲームみたいな感覚で、暗い雰囲気はないですね。

 成績が悪い生徒も、音楽が得意とか、話が面白いとか独自のキャラクターを確立していて、むしろ仲間の人気を集めていたかもしれません。