卒業生を見ていると、開成は真面目なイメージがあります。灘はもっと個性が強いイメージ。

松本:開成の生徒は社会的な動物なんですよ。社会に出ても敵を作らない人が多いんじゃないですかね。入学当初は茶髪だってサングラスだっています。みんな中学で一番の成績だから鼻っ柱も強い。でも、入学直後に鼻っ柱を粉々にするイベントがあります。

 中学に入学してすぐの事でした。昼休みにお弁当を食べてると、いきなり高校3年の生徒が教室にやってきて、「箸を置け」というわけです。みんなぽけっとしてると、3年生が黒板をバンと叩いて「箸を置けーーーー!!」。驚きますよね(笑)。「これから毎日1カ月間、体育祭に向けて昼休みに応援の練習をする。分かったか!?」「はい!」「返事ははいじゃない!おうだ!」と。これだけ理不尽だと抵抗できませんよね。でも理不尽なことなんて社会に出てからいくらでもありますから。早いうちに経験できたのはよかったと思っています。(編集部注:開成の応援練習の伝統は今も続いている)

開成は体育祭が盛んとは言われてはいますが、そんな背景があったんですね。そうした開成での学びは社会人となってからも生きていますか?

松本:人は人を信じられる、他人は信じられる。開成でそういう考えが身につきましたね。ネットワークをつくる上で、その気持ちがあると全然違います。スキルやノウハウではなく、気持ちの持ちようです。

しかし、その年頃の男子生徒だと、斜に構えて応援練習なんか真面目に参加しない子もいませんか?

松本:開成って、勉強ができるかどうかは生徒の間での評価の対象にならないんですよ。年に何回か模試もあるけど、それでどうということはない。人付き合いがちゃんとしている、いいやつが人気になるんです。だから、斜に構えるやつもいないわけではないけど、人付き合いをちゃんとするように段々と変わっていきますね。

東大進学実績は「慣性」

授業や進路指導に特色はありましたか?

松本:ないと思いますよ。一介のOBでしかない私がそんな事言ったら問題かもしれませんが(笑)。それよりも、ゆるいつながりこそが開成らしさですね。

 今でも2カ月に1回、決まった場所、決まった時間で同期の飲み会をやっています。集まるのは10人くらいですかね。いろんな社会的立場の人が来るけど、それがどうということはない。普通のサラリーマンも、小さな下町の会社の人もいるけど、そこで評価はされない。あくまで人の良さが大事です。たまに何十年ぶりに顔を見せるやつもいる。何か思うことがあってきたんだろうけど、何も勘ぐったりはしないし、普通に受け入れられる。母校ではなく母港みたいな存在だと思っています。

なぜ開成はトップの進学実績を維持できるんでしょうか。

松本:勢い、というかまあ慣性ですね。これまでもたくさん東大に受かってるし、開成で半ばまでの成績ならまず東大は受かる、なら俺も受かるだろうという。

そんなあっさりしたものですか(笑)

松本:(北海道)北見市がなぜカーリングが強いのか、という問いと同じことです。慣性があるから人が集まり、当然のように目標として設定し、推進力も生まれる。

ではやはり、開成のすごさとは結局、友達?

松本:そうですね。もちろん教員の方々がそういった校風を大事にしてくれているからです。イメージはネットに入ったイガ栗。バラバラにはならないけど、尖った部分がネットからはみ出していても良い。箱とかに入れてトゲをたわめるようなことはしない。そんなゆるいつながりを演出してくれているんだと思います。