「マニュファクチュールもご案内できますが、希望されますか?」
 「ま、まにゅふぁくちゅーる?」

 2016年3月14日号の特集「同族だから強い」で、スイスの高級腕時計・ジュエリーブランドのショパールに取材を申し込んだ時のこと。日本法人の女性広報担当者にこう提案され、最初は何のことやらさっぱり分からなかった。

 マニュファクチュール…。英語の「マニュファクチャリング(製造)」に似ているから、きっと工場のことに違いない。だとしたら、こんなうれしいことはない。筆者は自称「カイゼン記者」。スイスの高級腕時計の工場がどんなカイゼンを実践しているかを見る機会など、そうそうあるものではない。

 「ぜひうかがわせてください!」

 それからというもの、ヨーロッパ的でしゃれた響きのある「マニュファクチュール」という言葉が大好きになった。本物を見る日が待ち遠しかった。

期待を裏切る? 日本の工場との共通点

 2月下旬の取材当日。本社はジュネーブ中心部から自動車で約20分の場所にあった。対応してくれたのは、本社広報担当者のA氏。本社とマニュファクチュールの見学から共同社長のカール・フリードリッヒ・ショイフレ氏へのインタビューに至るまで、常に付き添ってくれた。

 会議室で会社の概要を聞いた後、いざマニュファクチュールへ。本社受付の脇にあるドアを開けると細長い廊下があり、その先が製造現場になっていた。A氏と長い廊下を歩いていると、すれ違う人が全員、「ボンジュール」と挨拶をしてくれる。日本の工場でも、挨拶を徹底しているところは多い。

 「ここが機械加工のエリア…ボンジュール…で、こんな小さな部品を加工していて…ボンジュール」

 こんな感じでA氏の説明は時折、挨拶で中断される。

 「ごめんなさい。誰に言われたわけでもないけれど、ここでは挨拶するのが当たり前なもので…」

 「いやいや、日本も同じなので気にしないでください」

 そんな会話をしながら目の前に広がっていたのがこんな光景だ。

部品の機械加工をする現場