大学卒業後の1988年、代々、家族で継いできた星野温泉旅館に入社した星野代表は、一族の役員による備品の持ち去りなど「公私混同」に嫌気をさし、当時の社長だった父親と激突した。変革を訴えるも聞く耳を持たぬ父。一度は会社を離れた星野代表だが、周到な準備の末、取締役会で反旗を翻す。1991年、父を追い出す格好で社長に就いた星野代表は、当時をこう振り返る。

創業約100年の星野リゾート4代目、星野佳路代表は「ハードランディングの事業承継も1つの形」と話す(撮影:的野弘路)
創業約100年の星野リゾート4代目、星野佳路代表は「ハードランディングの事業承継も1つの形」と話す(撮影:的野弘路)

 「事業承継は、理想的な方法が1つあるのではない。時代とか、親子関係、同族の状態によって変わってくる。その中で、ソフトランディングもあれば、ハードランディングも正しい承継の方法として存在する。私はハードランディングをとりましたが、あの時代、私たちの状態から考えると、やむを得ない選択であったし、結果から言うと、非常に成果があったと考えています」

 昨年の今頃、メディアをにぎわせていた大塚家具の親子対立にも重なる。創業者である父・大塚勝久氏と、2代目社長となった娘、大塚久美子氏が経営方針を巡り火花を散らせた。プロキシーファイト(委任状争奪戦)を経て久美子氏が経営権を掌握。勝久氏が築いた「会員制」を廃止し、品ぞろえも高級家具から中価格帯路線に転換するなど、事業モデルの大転換を進めている。

「レジームチェンジが必要な時もある」

 「大塚家具も同じようにハードランディングを選択せざるを得なかったケースだと思う」と話す星野代表は、そのメリットをこう説明する。

 「ハードランディングにもメリットはあります。それは、前体制の戦略を一切、引き継がなくていいということ。前の世代を大事にしながら徐々に変わっていきましょう、という中途半端な世代間の妥協をしなくても済む。つまり、ぜんぶ、ぶっ壊せるのです」

 「時代や環境の変化についていくために、全てをぶち壊す、幹部を含めてレジームチェンジが必要な時もある。そのために権力を奪取するというのは、息子や娘しか取れない手法なんですね。一般の大手企業にはできず、それがなかなか変革できない一番の理由ではないでしょうか」

 「ハードランディングを推奨するわけではないですが、日本のファミリー企業を活性化させるためには、早く世代交代をすることが大事。前政権が長くやりすぎて、次が50歳近くになって引き継ぐというのが、かなりある。結果、時代についていけない。変革を起こすには、30歳代がちょうどいい。だから、世代交代を早めれば、ファミリー企業が多い日本の観光業も、もっと変わるはずです」

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