服薬状況を家族のスマホに通知、見守り機能も

eお薬さんがIoT機器たるゆえん。患者が服薬すると、その情報が家族や医療関係者などのスマートフォンに通知される

 まず時間になると、薬が入った小箱がトレーに載った状態で前方に押し出され、その小箱を取り出すとトレーが自動で戻る。これが「お薬を飲んだ」の合図だ。機器がその合図を検知し、リアルタイムで家族や医師、ケアマネジャーなど5人までにメールで通知する。情報はクラウド上に蓄積されるため、後で医師などが、服薬の有無や時間の乱れなどを時系列の表やグラフなどで確認することもできる。

 一般にMCIの人は日常生活に支障がない。そのため基本的には自立した生活を送り、時折、家族やケアマネジャーなどが訪問してチェックをする。服薬状況をそうした関係者が共有することで、連携した「見守り」も可能になるわけだ。ちなみに機器への薬の投入は、こうしたタイミングで家族やケアマネジャーが実施すればいい。

 さらに一方方向のみではあるが、機器の液晶画面に家族から20文字までのメッセージを送ることもできる。「お母さん、明日、会いに行くね」などとパソコンの専用画面からメッセージを打ち込むと、機器の画面にその文字が表示される。

「取り扱いは薬局や施設のみ」の壁

 「お薬くらい自分で飲みたい。自立していたい」。エーザイは、そんなMCIの人の思いに応えたかったという。現時点では薬局やデイケア施設などの扱いのみで、個人向けには販売しない。「あくまで薬剤師や医師との対面でのコミュニケーションをサポートする道具」(同社)という位置付けだ。販売価格は8万5000円(税抜き)。

 曜日と飲む時間帯に分けて薬を入れられるポケットを設けた「お薬カレンダー」もあるが、それでも飲み忘れたり一度に複数回分の薬を飲んでしまったりするMCIの人は多い。家族にとって、こうした機器を導入できれば安心につながる。

 だからこそ個人向けにも広く販売することが大切だろう。エーザイは「薬剤師とのコミュニケーション」を強調するが、「他社の薬を入れて使ってほしくない」との思いも透けて見える。

 医薬メーカーに限った話ではないが、新規事業は既存の事業にとらわれずに展開しないと革新は起こせない。